広がる企業主導型保育 保育時間を柔軟に 地域から受け入れ 筑後地区

西日本新聞 筑後版

 待機児童解消を目的に政府が2016年度から始めた企業主導型保育事業が筑後地区で広がりを見せている。企業が従業員向けにつくる保育所に対して認可保育所並みの補助金を出す仕組みで、多くは地域枠を設けて企業外の子どもも受け入れている。筑後地区では昨年度末時点で16カ所が運営されており、本年度中にさらに7カ所が開所する。仕事と育児の両立だけにとどまらないメリットを探った。

 広川町の医療法人「八女発心会」が運営する姫野病院の敷地内に今年3月オープンした「はなまる保育園」。現在、0~4歳の50人を受け入れ、屋上の運動場では水遊びを楽しむ子どもたちの明るい声が響く。

 「近くに子どもがいるので安心して仕事ができます」。2歳の長男を預ける同法人の女性事務職員(38)は笑顔で話す。自宅がある筑後市は入園待ちで「もし病院に保育園がなかったら育児休暇を延長するしかなかったかも」。

 医療法人の特性を生かして同保育園では歯科衛生士による歯磨き教室や入院患者との交流を実施する。体調を崩した場合に病院の小児科で診察を受けることができるのも魅力の一つとなっている。

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 大牟田市の学習塾「有明塾」。幼児から高校生が学ぶ本部ビル1階に教室を改装して整備したのが「ありじゅくきっず」。女性講師の出産をきっかけに設置した。同塾の倉岡清児代表は「講師が働くのは夕方から夜間にかけて。認可保育所では仕事が終わる前に保育時間が終わってしまう」と語る。

 昨年6月に開所し、主に0~2歳を預かる。連携企業枠や地域枠を設け、定員12人は満員。「教育に携わる企業として子育てに理解を示すのは大事なこと。特に0、1歳児は預け先が少なく困っている人は少なくない。近隣の子どもも受け入れることで地域貢献にもつながれば」と期待する。

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 企業主導型保育事業は、施設整備費の4分の3が助成される。運営費の企業負担分は5%程度にとどまり、認可保育所並みの支援を受けられる。昨年度末までに助成が決まった施設は全国で2597カ所、保育定員にして約6万人分に上る。筑後地区でもみやま市と大刀洗、大木両町を除く9市町で開園または開園に向けた準備が進む。

 最大のメリットは働き方に応じて保育時間やサービス内容を柔軟に変更することができること。はなまる保育園では、看護師などシフト制で働く親に対応するため、保育時間を午前7時~午後8時に設定。「ありじゅくきっず」も午後7時半まで延長可能で、授業を終えた講師が子どもと一緒に帰宅できるよう配慮した。いずれも、近隣自治体の認可保育所に比べて長めに保育時間を設定しているという。

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 八女発心会は、既に12年から別の職員用保育所を運営してきた。出産や育児による離職が減少し、職員の合計特殊出生率は15年に全国平均の1・46を大きく上回る2・43にまで上昇したという。同法人保育事業部の竹下勝博事務長は「経験豊富な職員が働き続けられる環境を整えることは、病院の信頼にもつながる」と強調する。

 課題は保育士の確保。保育士は重い責任に見合わない低待遇を理由として資格を持っていても敬遠される傾向にある。計画的に定員を整備する自治体の保育サービスとは別枠の企業主導型保育事業が広がる中、人手不足は深刻化している。

 はなまる保育園は、現状では保育士の数は足りているが、定員102人が満員になった場合は保育士の増員が必要になるという。「保育時間を長くしているため、保育士の負担も大きくなる。人数を増やすなどして働きやすい環境をつくることが喫緊の課題」と竹下事務長は語る。待機児童対策の切り札とされる企業主導型保育事業。今後も安定的に広がっていくためには、保育士の待遇改善、働き方改革が欠かせない。

=2018/07/28付 西日本新聞朝刊=

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