有明海再生の道筋なお見えず 諫干開門命令「無効」

西日本新聞

 相反する司法判断に混迷を深めてきた諫早湾干拓事業を巡る開門問題。2010年に確定した開門命令を「無効化」した30日の福岡高裁判決を受け、一連の訴訟は大きな節目を迎えたが、問題の原点とも言える「有明海再生」への道筋は見通せないまま、置き去りになっている。

 福岡高裁は今年3月に示した和解案で開門の代替策として国が示していた有明海再生のための基金案を「現在の混迷、膠着(こうちゃく)した状況を打開する唯一の現実的な方策」と評価した。総額100億円を積み、有明海沿岸4県や漁業団体が組織をつくって種苗放流や有害生物の駆除などを支援する内容だった。

 ただ、確定判決に基づいて開門を求める漁業者側が和解に応じるはずもなく、基金案は宙に浮いていた。国は、沿岸4県の漁業団体の中で最後まで開門を目指していた佐賀県有明海漁協に対し、基金を受け入れなければ、海底耕運などの有明海再生事業も見直すと示唆。昨年4月の長崎地裁判決後に明確にした非開門方針を押し通した。振り回された関係者の徒労感は色濃い。

 そもそも16年度までに国が計387億円を投じてきた再生事業自体の評価は限定的だ。漁場環境改善の効果を疑問視する声が目立ち、事業で落ちるカネが、漁獲量減少にあえぐ漁業者の生活を支えている側面が強い。基金案は、この再生事業を「加速化」する内容にすぎず、抜本的な再生策につながるとは考えにくい。

 国は今後も基金による和解の方針を目指す方針だが、漁業者側が国や裁判所に抱く不信感も決定的になった。和解解決の機は当面見通せそうもない。

 潮受け堤防閉め切りから21年。国が今回の判決を盾に非開門方針を貫く以上は、今まで以上の覚悟を持って有明海再生と向き合い、成果を出さなければならない。国の責任は一層、大きくなった。

=2018/07/31付 西日本新聞朝刊=

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