諫干開門命令「無効」 司法判断のねじれ解消 国側逆転勝訴、漁業権は消滅

西日本新聞

 国営諫早湾干拓事業(長崎県諫早市)の潮受け堤防排水門の開門を強制しないよう国が求めた請求異議訴訟の控訴審判決で、福岡高裁(西井和徒裁判長)は30日、国の請求を退けた一審佐賀地裁判決を取り消し、開門を命じた福岡高裁確定判決(2010年12月)を無効とする判断をした。今回の判決が確定すれば、異なる司法判断が並立したねじれ状態は「非開門」で統一されることになり、漁業者側が求めてきた開門の実現は一層困難になる。漁業者側は上告する方針。

 高裁は、国が併せて申し立てていた制裁金(1日90万円)の支払い停止も認め、支払い済みの制裁金12億330万円(10日現在)の全額を「無効」と判断した。国は今後、漁業者側に返還を求めるとみられる。

 今回の訴訟は、国が確定判決後の「事情の変化」を理由に異議を申し立てた。西井裁判長は「漁業者の共同漁業権は13年8月の有効期限の経過で消滅し、開門を求める権利も失われた」として国の主張を認めた。

 漁業権は再取得されており、漁業者側は「漁業権は継続が前提。再取得した権利は確定判決時の権利と同一だ」と主張したが、西井裁判長は「前後の権利は法的に同一とは評価できない」と退けた。

 国側は「漁獲量が回復傾向にある」「制裁金で漁業被害は補償された」とも主張。漁業者側は「漁業被害は続いている」「制裁金はペナルティーであって補償ではない」と反論していたが、判決は「判断するまでもない」として検討もしなかった。

 一連の訴訟では、開門判決が確定した一方で、開門を禁じた長崎地裁決定などがあり、国は相反する法的義務を負っていた。請求異議訴訟で高裁は3月、開門せず国の100億円基金で総合的な解決を図る和解案を提示。漁業者側は「開門も含めて協議すべきだ」として拒否し、協議は決裂していた。

 国営諫早湾干拓事業 農地確保と低地の高潮対策を目的に、有明海西部の諫早湾を全長7キロの潮受け堤防で閉め切り、672ヘクタールの干拓農地と、農業用水を供給する調整池2600ヘクタールを整備した。総事業費は2530億円。1989年に着工、2008年に営農開始。昨年4月現在、約40の個人・法人が農業を営む。潮受け堤防の南北2カ所に排水門があり、随時有明海に排水して調整池の水位を一定に保っている。1997年の閉め切り後、ノリ色落ちやタイラギ不漁などの漁業被害が表面化。漁業者側は開門調査を要求、営農者らは塩害などの農業被害が出るとして反対している。

=2018/07/31付 西日本新聞朝刊=

PR

社会 アクセスランキング

PR

注目のテーマ