「未来のミライ」実際の会話から生まれたセリフも 細田守監督が語る制作秘話

西日本新聞

 アニメ映画「サマーウォーズ」「おおかみこどもの雨と雪」などヒット作を連発し、海外からも熱い注目を集める細田守監督。上映中の新作「未来のミライ」はリアルな家庭を描きつつ、ファンの期待を裏切らないファンタスティックな展開で引き込まれます。実は本作には、細田さんも気付かなかった九州との意外な結びつきがあるんです!

 -本作はくんちゃんという4歳の男の子が主人公。両親が生まれたばかりの妹にかかりきりになり、激しく焼きもちを焼きます。

 ★細田 僕の長男が3歳だった時、妹が生まれて親の愛が奪われたと思い、床にひっくり返って暴れていたんです。その姿を見て、人間は愛を奪われるとどん底の気分になるんだと思いました。僕らも10代20代のころ、異性と別れると床を転げたくなるような気持ちになった。どんな年齢であれ、愛を巡るあれこれが人生なんじゃないか。4歳を主人公にしても、いろいろな人に見てもらえる普遍的な愛の物語が可能なんじゃないかと思ったんです。

 -くんちゃんは、未来から現れた妹(ミライちゃん)と時空を超える旅をします。

 ★細田 未来から妹が現れるという設定は、ある朝、息子にどんな夢を見たのかを尋ねたら、成長した妹に会って一緒に電車に乗ったと答えたんです。それを聞いて、いいなと感じました。映画のせりふにありますが、「お父さんも会いたいな」と本当に思って妻にも話すと、「私はまだ赤ちゃんのままでいい」と映画のシーンと同じ会話をしました。

 -細田さんの作品には一貫して家族が描かれています。家族から受ける影響は大きいんですか。

 ★細田 毎回そうです。特に「サマーウォーズ」からずっとそう。「サマーウォーズ」では結婚して親戚が増えたことが面白かったし、「おおかみこどもの雨と雪」は僕の母が亡くなり息子と母の関係を考えたことがきっかけ。「バケモノの子」は上の子が生まれて、どうやって父親になればいいのか分からないという葛藤から生まれました。子どもが育つ環境として家族はとても重要なのではないかという問題意識があり、家族をテーマにせざるを得ません。

 -日本の映画界では是枝裕和監督も家族を描き続けています。

 ★細田 是枝さんがどのように家族を捉えているのか分かりませんが、小津安二郎からの日本映画の文脈で、現在は是枝監督だと言えるんでしょう。しかしアニメーション映画の文脈で家族をやっている人はなかなかいない。いるとすれば高畑勲監督ですが、亡くなってしまったので、今のアニメ界で家族をやっているのは僕くらいじゃないですか。

 -日本のアニメ界は、宮崎駿さんや高畑勲さんたちから、細田さんや新海誠さんなど新しい世代への移行を強く感じます。

 ★細田 高畑さんは家族や日常をずっと描いていて、一見地味で映画にならないようなものこそ素晴らしい映画になるとおっしゃっていました。デフォルメしたマンガっぽい表現だったアニメーションに、初めて日常をしっかり描き映画的な感動を与えた人。僕の作品もその考えの延長にある。高畑さんの作品や志を誰かが引き継ぎ、アニメーションの表現を、もっと言えば世界の映画表現を発展させる必要があります。高畑さんから受けた影響を自分なりの表現として模索して作り続けたい。

 -声優の主要キャスト8人のうち、上白石萌歌さん(鹿児島県出身)や役所広司さん(長崎県出身)など4人が九州出身です。

 ★細田 おっ! 本当だ。今気付きました。この家族の半分は九州だったんですね。

 -それは偶然だとして、今作の舞台は横浜をイメージしたそうですが、今後、九州を舞台にしてみようとは思いませんか。

 ★細田 常に思っていますよ(笑)。実は一昨年の夏に(博多祇園)山笠の追い山を見に来たんです。すごく厳かな神事でした。坂が好きなので長崎に行ってみたいし、萌歌ちゃんの出身地の鹿児島にも行きたい。出合いがあれば、舞台にする気満々です。

 ▼ほそだ・まもる 1967年生まれ、富山県出身。金沢美術工芸大を卒業後、91年に東映動画(現東映アニメーション)に入社。99年、「劇場版デジモンアドベンチャー」で映画監督デビューした。筒井康隆原作の「時をかける少女」(2006年)が記録的なヒットとなり、09年に初のオリジナル作品となる「サマーウォーズ」を公開した。

=2018/08/04付 西日本新聞朝刊=

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