長崎原爆、芝居で伝える 創成館高演劇部、全国大会へ

西日本新聞

 あの瞬間まで長崎には普段の暮らしがあった。今の私たちと同じように-。創成館高(長崎県諫早市)の演劇部が、長崎原爆投下直前の爆心地の家族を描く創作劇「髪を梳(と)かす八月」を7日、長野県で開かれる全国高校演劇大会で九州代表として上演する。73年前、一発の核兵器で人々は日常を奪われた。12人の部員は昨秋以降、公演を重ねながらその無念に思いを巡らせた。被爆体験の継承が困難になる中で、若い世代が問い掛ける舞台となる。

■「今ある命って大切なんだ」

 高等女学校の入学式を翌日に控えた主人公と母親、妹が自宅で語り合う場面。入学祝いにと母親が炊いた小豆にはしゃぐ姉妹の耳に柱時計の「ボーン」という音が届く。午前10時半。原爆投下32分前-。

 厳しい戦況の中、暑い夏の一日。せりふのタイミング。手の動き。どうすれば直後の運命を知らぬ人々をリアルに演じられるのか。針仕事、特攻隊に召集されたいとことの別れ…。公演のたびに脚本は細かく修正された。午前11時2分、長女が母に髪をといてもらう場面で幕は下りる。

 長女役の松藤みづほさん(16)は「最初は私たちが演じていいのか戸惑った」という。親類に被爆者はいない。原爆の資料を読み、当時の女性の所作を祖母に習った。昨年10月に初演、12月の九州大会で最優秀賞に選ばれ、12校が出場する全国大会への切符を手にした。思い悩み、演じるうちに、核兵器の恐怖を身近に感じるようになった松藤さん。「今ある命って大切なんだと思う」

■「長崎を最後の被爆地に」

 脚本は顧問の塚原政司教諭(48)が手掛けた。戦争で延期された女学校の入学式が原爆投下翌日の8月10日だったという被爆者の手記に着想を得た。塚原教諭は2001年、鹿児島市の高校でも長崎原爆を題材に劇を作り、全国大会へ。長崎への修学旅行生が語り部にやじを飛ばした出来事を知ったやるせなさが、創作につながった。

 塚原教諭は「どうすれば被爆者の人生を想像し、平和や核廃絶の願いを受け継げるか生徒たちに考えさせたい」と言う。

 7月末、長崎原爆資料館で上演する機会を得た。客席に姿を見せた被爆者からは「若い人が興味を持ってくれてありがたい」という評価の一方で「物足りない」との率直な声も届いた。

 被爆者を前にした舞台で足が震えたという母親役の森山千代さん(17)は「うまく演じられているか分からないけど、全国の高校生が原爆や長崎を知るきっかけになればいい」と話した。

 「長崎を最後の被爆地に」-。生徒たちは集大成の場で被爆者の思いを受け止め、発信する。

=2018/08/05付 西日本新聞朝刊=

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