映画やテレビドラマの原作になる小説を数多く残した松本清張に、「原作を超える」と言わせた映画が3本ある…

 映画やテレビドラマの原作になる小説を数多く残した松本清張に、「原作を超える」と言わせた映画が3本ある。筆頭は「砂の器」(1974年)

▼映画「砂の器」を見た人は、ハンセン病の父親と幼い息子が故郷を追われ放浪する回想シーンに心を揺さぶられる。放浪を包む四季の美しさと、差別する社会とのあまりの違い、そしてなによりも巡礼姿の親子の絆

▼放浪するシーンは原作にはない。野村芳太郎監督から脚本を任された橋本忍さん(先月19日死去)が、原作では「故郷福井を出た後、どうやって島根にたどり着いたかはこの親子しか知らない」とされる部分に映画としてのメッセージを紡いだ

▼脚本を手伝った山田洋次さんと一緒に創出した。ただ、費用がかかり過ぎるというのでお蔵入りになり、橋本さんが独立プロダクションを設立するまで日の目を見なかった。「脚本家・橋本忍の世界」(村井淳志著、集英社新書)に詳しい

▼小泉純一郎元首相は首相になるずっと前にこの映画を見たそうだ。長い放浪生活の果てに息子から引き離され隔離された父親を、後年、刑事が療養所に訪ねる場面にひどく感動したという。その場面も原作にはない

▼隔離政策に対するハンセン病国家賠償請求訴訟で、一審敗訴の国は控訴せずに謝罪した。当時の小泉首相が最終決断した。自然な気持ちだったようだ。映画には、「橋本脚本」には、そんな力もある。

=2018/08/08付 西日本新聞朝刊=

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