「いっぽんばし わたる」は40年近く前に出版された五味太郎さんの絵本…

西日本新聞

 「いっぽんばし わたる」は40年近く前に出版された五味太郎さんの絵本。いろんな動物が一本橋を渡ろうとする。「ぴょん ぴょん わたる」「ならんで わたる」「はら はら わたる」「むりして わたる」「ぼんやり わたる」…。中には「げんきに わたる」「げんきに おちる」者も

▼それぞれの渡り方で、みんなが目指す「いっぽんばし」の向こう。そこに何があるのだろう。きょう、長崎原爆の日に、私たちが向こう岸に思い描くのは「核なき世界」である

▼熱線に焼かれ、放射線にむしばまれ、家族を失い、血と涙の橋を渡ってきた被爆者たち。悲劇は繰り返させぬ、と怒り、叫び、祈る。記憶を風化させぬ、とつらい体験を語る。高齢を押し「むりして わたる」姿は胸に迫る

▼「ならんで わたる」の声が世界から。国連で核兵器禁止条約が採択された。「ヒバクシャの受け入れ難い苦しみに留意する」と条約の前文に。核廃絶を訴える非政府組織(NGO)にはノーベル平和賞が

▼「核は絶対悪」の立場から見れば「ぼんやり わたる」かのごとき日本政府だ。条約に反対し、米政権が開発する小型の「使える核」を評価。「核の傘」から外されないよう「はら はら わたる」ようにも

▼安倍晋三首相は「核廃絶は私の信念」と。威勢はいいが、海の向こうを気にするあまり、元気な大統領と一緒に「げんきに おちる」とならないか。

=2018/08/09付 西日本新聞朝刊=

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