古来、長い年月を経た器物には精霊が宿るとされた…

西日本新聞

 古来、長い年月を経た器物には精霊が宿るとされた。「付喪神(つくもがみ)」と呼ばれ、手足が生えた鍋や釜、つぼなどの姿で描かれた

▼近頃の妖怪ブームで付喪神にも脚光が。古道具屋の付喪神たちが難題を解決する畠中恵さんの小説「つくもがみ貸します」が人気だ。愛着が強い道具は自分の一部のようで、命が宿ってもおかしくはない気がする

▼私事で恐縮だが、両親が長年暮らした家を処分することになった。家族で囲んだ食卓は磨き込まれて温かなあめ色。父が背を丸めて書き物をしていた文机(ふづくえ)、祖母が残した着物を大切にしまっていた母の和だんす…

▼それぞれに忘れ得ぬ思い出があり、捨てるには惜しい。家を買ってくれる方がそのまま使っていただける、と聞いてほっとした。もちろん付喪神はいません。ご安心を

▼このお盆に里帰りや墓参りをした人も多いだろう。亡き人をしのぶよすがに、愛用の品を改めて手に取ってみるのもいい。心の引き出しの隅に入れっ放しだった場面が、ふっとよみがえることもある。古い道具の不思議な力かもしれない

▼現代人が片時も離さない道具といえばスマートフォンか。電車やバスの中で、道端でも、画面とにらめっこする姿があちこちに。お盆はあの世とこの世が近づく時だそうだ。幽霊や妖怪の出番も増えよう。あんまりスマホばっかり見ていると、おやおや、手足がにょきにょき生えて付喪神に化ける、かもね。

=2018/08/15付 西日本新聞朝刊=

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