日米貿易協議 安易な譲歩や妥協避けよ

西日本新聞

 日米両政府の閣僚級による新たな貿易協議の初会合が先週、米国で行われた。茂木敏充経済再生担当相と米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表が交渉に臨んだ。

 案の定、対日貿易赤字削減を求める米国は、日本との自由貿易協定(FTA)を念頭に、2国間交渉開始を求めてきた。日本は多国間の自由貿易体制を重視する考えを強調し、議論は平行線をたどった。今後、両国間の貿易促進策作りを進めるという。焦点だった自動車や農産品など個別分野の論議は、9月の次回会合以降に持ち越した。

 日米関係を考えれば対立は得策でないが、無理筋の要求に安易な譲歩や妥協は禁物だ。影響を最少化するため、米国が検討中の自動車への追加関税や農産品の市場開放要求など重要案件を棚上げに導く戦略と、要求を上手にかわす外交力が必要だ。

 新貿易協議は、4月の日米首脳会談で設置が決まった。自由(Free)、公正(Fair)、相互的(Reciprocal)な貿易取引の協議が目的だ。頭文字からFFRと呼ばれるが、米国が安全保障を「人質」に日本車への高関税をちらつかせ、農畜産物の市場開放を迫ろうとの思惑が透けて見える。

 背景には、対日貿易赤字削減のほか、環太平洋連携協定(TPP)離脱を自ら選びながら、発効で自国の農産品が日本市場での競争力を失いかねないとの危機感、さらに11月の中間選挙に向けたアピールもあろう。

 日本は、農業で譲歩しない、追加の自動車関税は避ける、2国間のFTAは回避する-の三つが基本方針だ。方針を堅持しつつ着地への戦略を練ってほしい。日本はあくまで、貿易上の措置は世界貿易機関(WTO)協定と整合的でなければならない-の原則を貫くべきである。

 中でも、自動車への追加関税問題に日本がどう対応するのかは、国際的にも関心度が高い。

 「自動車輸入が国家安全保障上の脅威に当たる」と輸入制限を検討すること自体、ナンセンスだが、米国市場での年間自動車販売台数1723万台の約4割は日本車だ。仮に25%の追加関税が課されると、日本からの輸出車1台につき約67万円の負担増になるとの試算もある。自動車各社には大きな打撃だ。

 大統領は追加関税で米国の自動車産業の回復を夢みているようだが、それは幻想である。むしろ、米国内で完成車の販売価格上昇を招き、販売網や雇用にも悪影響を及ぼしかねない。

 自由、公正、相互的をうたうなら、貿易相手国の攻撃より、相互に建設的な貿易振興策を探りたい。FFRを日本の一方的譲歩の場とせぬ工夫が大切だ。

=2018/08/16付 西日本新聞朝刊=

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