海賊版サイト 接続遮断は慎重に議論を

西日本新聞

 インターネット上で漫画や雑誌を無料で読める「海賊版サイト」の著作権侵害問題は、政府が抜本的対策を検討中で、9月にも中間報告が出る予定だ。それに先立つ緊急対策として法的裏付けがないまま、プロバイダー(接続業者)によるサイトブロッキング(接続遮断)が打ち出されたが、これは拙速に過ぎ、「通信の秘密」を保障する憲法に違反する恐れもある。丁寧で慎重な論議を求めたい。

 海賊版サイトは、漫画などのコンテンツを著作権者の了解を得ずに無料で公開している。若い世代を中心に利用者が増えており、著作権被害は昨年9月からの半年間で約4300億円に上るとの推計もある。出版社や漫画家は、サイトを利用しないよう呼びかけている。当然だ。

 問題が表面化した今春、政府は閣僚会議で、「接続遮断が適当」とする緊急対策を決め、掲載漫画数が豊富な「漫画村」など3サイトを特に悪質と名指しした。スマートフォンなどを介したサイト訪問者は、月に計2億人を超えるという。

 政府に呼応してNTTは、グループのプロバイダーが接続遮断を決めたが、問題の3サイトは既に閉鎖され、実際に遮断はされなかった。ただ、それで済む問題ではない。プロバイダーの団体は、海賊版利用者を特定して遮断する方法は、すべてのネット利用者を対象にサイトの接続先などを常時監視することが前提とし、「通信の秘密」の侵害に当たると指摘している。

 政府は、刑法の「緊急避難」であり、違反には当たらないと説明する。2011年以降、児童ポルノを扱うサイトへの接続を遮断している例もある。

 ただし当時は関係省庁、プロバイダー、有識者らの3年にわたる議論を経て、被害児童の人権を守るにはやむを得ないとして認められた経緯がある。今回の緊急対策は第三者などを交えた丁寧な論議の形跡はない。

 政府が恣意(しい)的に「悪質」とするサイトを指定して接続遮断を促すようであれば、実質的な検閲であり、「言論の自由」も侵される。そうした恐れも視野に入れて考える必要があろう。

 政府は、抜本策を検討する知的財産戦略本部の有識者会議が9月にもまとめる中間報告を踏まえ、来年の通常国会で法整備を図る方針だ。有識者会議には海賊版サイトの収入源である広告収入を断つなど他の方法の検討も求めたい。ネット利用者への十分な啓発も必要だ。

 海賊版サイトは、漫画や書籍、映画といった文化の健全な発展を阻害する存在で、許されないのは言うまでもない。利用者も無料だからと安易な接続はやめるべきだ。

=2018/08/18付 西日本新聞朝刊=

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