ひとり親支援で無料塾 NPO法人「わたしと僕の夢」代表理事・佐藤さん 「貧困の連鎖、断ち切りたい」

西日本新聞 筑後版

 西鉄久留米駅(久留米市)にほど近いビルの2階から、子どもたちの元気な声が響く。「解き方教えて」「先生、この問題がよく分からん」-。ひとり親や生活保護家庭向け無料塾の夏休みの光景だ。この日は、中学生約20人が畳を敷いた部屋で長机を囲み、テキストに向かっていた。

 塾はNPO法人「わたしと僕の夢」が運営。小中学生向けに勉強を教える「あしたね」は週に3回、生活保護世帯や不登校の中学生の高校進学を支援する「東和塾」は週に2回開く。いずれも食事付きで、子どもたちの憩いの場としても機能している。代表理事の佐藤有里子さん(50)は「気軽に来て落ち着く、おばあちゃんの家のような空間を心がけています」とほほ笑む。

 自身の経験がきっかけとなった。30代で離婚して派遣会社に勤め、自分と同じような境遇の女性が、1人で仕事と子育てを両立する難しさを間近で見てきた。「お金がなく、子どもの運動会でお弁当を作ってやれなかった」という嘆きも聞いた。女性が柔軟に働ける職場をつくろうと、2002年に独立し、人材派遣会社を立ち上げた。

 病気や授業参観など、子どもに合わせて休みが取れる環境づくりを目指し、協力してくれる勤務先を探した。会社が軌道に乗ると、母親の仕事が終わるのを待つ子どもたちが事務所に集まるようになった。おなかをすかせた子どものためにと、カレーや豚汁を振る舞った。

 「子どもを塾に行かせてあげたい」という声に応え10年4月、無料塾を始めた。塾代や食事代がいらず、電気代も気にせずエアコンの下で過ごせる。現在、講師は元教員や大学生、児童相談所の職員など約30人が交代で務める。市が紹介した子どもも受け入れ、全クラスを合わせると生徒数は約100人に増えた。

 ひとり親家庭は子どもの貧困率が高いことが問題になっている。高校や大学への進学率が低く、親から子に貧困が連鎖しやすいとされる。中卒の女性の働き口を探すことが最も難しいと感じているという。まずは連鎖を断ち切るため「塾代を気にせず勉強して高校に進学し、将来の選択肢を広げてもらいたい」と力を込める。

 次の目標は子どもたちの体験の場を増やすこと。イベントに模擬店を出し、お金を稼ぐ機会をつくろうと計画中だ。「部分的な取り組みには限界がある。子ども自身のためにも働く女性のためにも、地域ぐるみの教育環境を確立したい」

=2018/08/19付 西日本新聞朝刊=

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