未解決、福岡市の夫婦殺害事件 現場宅を住民憩いの場に 17年前発生、風化防ぎ供養願う

 手書きの看板が立つ「若宮5丁目集会所」に、歌声が響く。そこは2001年2月、福岡市東区の金丸金次郎さん=当時(81)=と妻の愛子さん=同(73)=が殺害された自宅。未解決のまま月日は流れ、今は地域の集会所として住民の憩いの場になっている。「事件の風化を防ぎたい」と願う遺族と、「優しかった夫婦の供養をしたい」という地域の人々の思いが通じ、実現したという。

 今月21日午後。木造2階建ての「集会所」では、近くに住むお年寄り4人がカラオケを楽しんでいた。老人会「若鶴会」のメンバーだ。事件現場とは思えない穏やかな時間が流れる。そばには夫婦をまつった仏壇がそっと置かれていた。

 「突然両親の命が奪われ、自宅で何をどう残せばいいか途方に暮れた」。次女の藤堂早苗さん(63)=千葉県松戸市=は事件後、時折帰省し、10年かけて片付けをした。父の趣味だった写真、母の書道作品など、捨てられないものも多かった。結婚式の前、着付けをしてもらって家族写真を撮ったのもこの家だった。

 苦しい記憶で上塗りされた凄惨(せいさん)な事件現場は、それでもやはりかけがえのない実家。更地にすることも考えたが「解決するまでは残す」と決めた。そこに近所の住民から「集会所がなく困っている。家を使わせてほしい」と申し出があり、「事件を語り継いでもらえれば」と快諾した。

 集会所になって6年あまり。若鶴会は週1回の会合と、カラオケやダーツなどを楽しむ月1回のイベントを開く。地域の町内会も掃除や修理をして大切に使っているという。「集う場所があるから町内は仲がいい。事件の情報収集にもつながるかも」と若鶴会の野口保夫会長(85)は言う。

 刑事訴訟法が2010年に改正され、殺人罪の時効は撤廃された。福岡県警は現在も福岡東署に捜査本部を置いて捜査を続行。毎年、命日に合わせて藤堂さんと署員らがチラシを配り情報提供を呼び掛けている。

 事件現場が当時のまま残り、地域と「共存」するのはまれなことだ。丸山裕司署長は「長い警察官人生で、被害者の息遣いがここまで残されている経験は初めてで、驚いた」と話す。24日に県警を退職する丸山署長は、こう確信している。「夫婦の無念を一日も早く晴らしてほしいという遺族と地域の思いは、捜査員に受け継がれている」

【ワードBOX】福岡市東区の夫婦殺害事件

 2001年2月26日、福岡市東区若宮5丁目の金丸金次郎さん=当時(81)=宅を訪れた近所の住民らが夫婦の遺体を発見。司法解剖などの結果、2人は同17日夕方から18日朝にかけて殺害されたとみられることが判明した。部屋を物色した跡があり、福岡県警は強盗殺人事件として捜査。足跡などから複数犯とみられるが、現在も犯人像は絞れていない。

=2018/08/24付 西日本新聞朝刊=

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