飲酒運転事故 「悲劇根絶」の誓い新たに

西日本新聞

 福岡県が飲酒運転の撲滅推進条例を制定したのは2012年である。全国で初めて罰則を設けた条例として注目された。

 飲酒に甘いとされる地域性を「社会風土」と指弾し、県、警察、県民一体の意識改革運動を展開してきた。

 制定の契機は、福岡市職員が幼いきょうだい3人を死亡させた飲酒運転事故だ。その事故からあすで12年となる。

 あろうことか、子どもたちの命日を前にした今月半ば、福岡県職員の保健師(44)が飲酒運転の疑いで逮捕された。

 県の聴取によると、保健師は休日の午後、同僚3人と福岡市内の居酒屋に入った。3次会まで飲酒を続けた後、1人で乗用車を運転して帰宅中に自損事故を起こした。酒席は6時間以上に及んだ。呼気中のアルコール分は摘発基準値の約4倍に上った。3次会以降は、運転したことを含め記憶がないという。日頃、自宅では飲酒しないが、外で飲むと記憶を失うことがあったと話しているという。

 12年前の事故の教訓や県民運動を踏みにじるような言語道断の不祥事だ。県は懲戒免職とした。当然であろう。

 全国の飲酒運転死亡事故は、昨年は200件余で、3児死亡事故当時の3割にまで減った。ただ最近は減少幅が小さく、下げ止まりのような状態で、危機意識の薄れが懸念されている。

 飲酒運転をする人の特徴と問題点は大きく二つある。

 第一は、摘発者のうち約3割は、アルコール依存症の疑いがあることだ。依存症は精神疾患である。日常生活の最優先事項が飲酒となる。飲まなければ禁断症状が出る。福岡の条例が摘発者に依存症の診断を罰則付きで義務付けたのはそのためだ。

 第二は、摘発者の6割近くは再犯という点だ。酒を飲めば多くの人は気持ちが大きくなり、正常な判断ができなくなる。自分だけは事故を起こさないという独り善がりの自信を持つ人も少なくない。酩酊(めいてい)した保健師もそんな状況に陥ったのだろう。

 依存症の患者はもちろんのこと、少しでも飲酒の習慣がある人はもう一度、立ち止まって考える必要があろう。自分にとって適正な酒量はどれほどか。運転免許を持つ者の責務として、自覚する必要がある。

 先の保健師のように飲むと記憶を失うようなケースなどには、何らかの医学的フォローも必要だろう。手頃な値段になった市販のアルコール検知器も積極的に活用したい。

 飲酒運転は重大な結果をもたらす悪質な犯罪だ。絶対にさせないという取り組みが一層求められる。「悲劇は根絶する」と社会全体で改めて誓いたい。

=2018/08/24付 西日本新聞朝刊=

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