困窮で「直葬」選ぶ遺族支援 無料で牧師を派遣 福岡のNPO「おとむらい牧師隊」

西日本新聞

 福岡県内の牧師たちがNPO法人「おとむらい牧師隊」(石村修善代表、福岡県那珂川町)を結成し、経済的な理由で、通夜や告別式などをせず火葬だけの「直葬」を選ぶ人を弔っている。依頼があれば、福岡都市圏の火葬場や遺体安置所などに無料で牧師を派遣し、遺族と一緒に祈りをささげて最期の別れを手伝う。

 牧師隊は、同町でキリスト教専門の葬儀社を営む石村さん(45)の呼び掛けで2016年11月に活動を開始。石村さんは、葬祭業に関わる中で、経済的な余裕がないために直葬を選ばざるを得ない人の存在を知った。「お金があってもなくても人は弔われるべきではないか」と、知人の牧師田宮宏介さん(61)=同県福津市=らに協力を求めた。

 17年にNPO法人化し、登録牧師は約30人に増えた。この夏には電話応対ボランティア2人も加わり、活動を本格化させた。

 これまで弔ったのは15人。牧師が火葬直前、家族と一緒に「アメイジング・グレイス」などなじみのある賛美歌を歌ったり、聖書の一節を朗読したりした。いずれもキリスト教信者ではなかったが、感謝されたという。父親の弔いを依頼してきた男性は、最初は「死んですっきりした」「骨は全部捨てて」などと言っていたが、牧師と話すうち「おやじにはおやじの事情があったんだ」と涙を流した。

 田宮さんは火葬が終わるまでの約1時間半、遺族と過ごすようにしている。布教活動はしないが、「死んだらどうなるのか」「天国と地獄に行く人の違いは?」などの質問があれば答える。田宮さんは「弔いは残された家族の悲しみを癒やすグリーフケアにつながる」と意義を強調する。

 東京の葬儀社アーバンフューネスによると、直葬を選ぶ割合は約13%(最近1年間、同社調べ)と増加傾向にある。葬儀関連サイトを運営する鎌倉新書(東京)の14年の調査では家族が直葬を選ぶ理由は「経済的理由」が58%と最多。昨年の調査では葬儀の平均総額(お布施は除く)は約178万円。これに対し、生活保護受給者に支給される葬祭扶助は上限約20万円で、直葬が増える背景は経済事情も大きいとみられる。

 石村さんは「最期の別れをしたくてもできない人たちの役に立ちたい」。派遣希望は随時受け付け、活動に賛同する協力者や寄付なども募っている。問い合わせは事務局=070(2612)7698(午前9時~午後5時)。

=2018/08/24付 西日本新聞夕刊=

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