陸上イージス 「費用対効果」の再検討を

西日本新聞

 大きな買い物をするときは、本当に必要か、値段が高過ぎないか、吟味して決めるのが庶民の常識というものだ。国民の税金を使うとなれば、なおさら慎重さが必要ではないか。

 防衛省は先月末、米国から購入する予定の地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の1基当たり取得経費が、当初説明の約800億円から増え、約1340億円になると発表した。約7割もの大幅増である。

 イージス・アショアとは、イージス艦搭載の迎撃ミサイルシステムを陸上配備型にしたものだ。日本に向かう弾道ミサイルを高性能レーダーで捉え、迎撃ミサイルで撃ち落とす。山口県萩市・阿武町と秋田市の2カ所を配備候補地に選定している。

 2基購入となるので、合計は約2680億円となる。さらに教育訓練や30年間の維持運用の経費などが約1985億円に上るとの試算も示した。機器を格納する建物の整備費も必要になるという。最終的には全部でいったい、いくらになるのか。

 これだけ費用が膨張しているのに、防衛省は「わが国の防衛に重要な装備」(小野寺五典防衛相)として、予定通り導入する方針を崩していない。

 イージス・アショアについて、政府は昨年12月、北朝鮮の核・ミサイル開発の脅威を理由にして導入を決めた。この導入理由も揺らいでいる。

 6月の米朝首脳会談で、朝鮮半島の緊張は当面緩和された。北朝鮮は今年に入って核実験やミサイル発射を行っていない。日本政府もこれを受けて、北朝鮮ミサイル対応の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を配置先から撤収している。

 小野寺防衛相は「北朝鮮の脅威は変わっていない。核やミサイル廃棄の動きはない」と説明する。しかし、今後の米朝協議の行方を見る前に、「脅威は不変」と判断して導入に踏み切るのは早計ではないのか。

 脅威が将来にわたってゼロでない限り最大限の備えが必要、という原則を採るなら、防衛費はいくらあっても足りない。

 政府の念頭には中国のミサイルへの対応もあるとされるが、それならそうと説明すべきだ。

 昨年11月に来日したトランプ米大統領は安倍晋三首相との会談後、記者会見でミサイル防衛に触れ「日本は(米国から装備を)大量に買うべきだ」と露骨に要求した。政府は米国の高額な防衛装備を購入することで、トランプ政権と良好な関係を保とうとしているのではないか。

 繰り返すが、購入費用は国民の税金である。「費用対効果」の再検討と、国民を納得させる説明が絶対に必要だ。それ抜きで導入は認められない。

=2018/08/26付 西日本新聞朝刊=

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