公務員定年延長 人件費は抑えられるのか

西日本新聞

 準拠すべき民間企業の動向を見極めつつ、財源にも配慮した慎重な検討を求めたい。

 人事院が、国家公務員の定年を現在の60歳から段階的に65歳まで延長するよう求める意見書を国会と内閣に提出した。実施時期は明示しておらず、政府に判断を委ねている。

 少子化の進展で労働力が減少する中、人材をどう確保して有効に活用していくか。それは、民間企業にとどまらず官公庁でも切実な課題であろう。

 人事院は国家公務員の定年延長が必要な理由を「複雑高度化する行政課題に対応し、質の高い行政サービスを維持していくため」と説明している。

 背景には民間企業の再雇用に当たる再任用の増加がある。政府は、年金支給開始年齢を段階的に65歳へ引き上げるのに伴い、同年齢に達するまで希望者を原則、常勤で再任用している。

 2013年度で約6800人だったが、18年度は約1万3300人と5年間で倍増した。ただし再任用職員のポストは約7割が「主任または係長級」にとどまり、勤務形態も短時間勤務が8割以上を占めるという。

 これでは職員の士気が落ち、公務能率の低下が懸念される-というのが人事院の見解だ。

 しかし、民間企業では依然、60歳定年制が主流である。人事院の今年の職種別民間給与実態調査によれば、定年が60歳を超える事業所(従業員50人以上)は全体の12・4%にすぎない。人事院が段階的移行を提言する「65歳定年制」に至っては、わずか8・7%である。

 国家公務員の定年をいわば民間に率先して延長する意義と利点は何か。逆にデメリットはないのか。国民的議論が必要だ。

 定年延長に伴う措置として人事院は、60歳になった管理職を下位のポストに降格させる「役職定年制」の導入を提言した。若手の昇進ペースが遅くなるのを防ぐためだ。

 また60歳を超える職員の給与は民間の実情を踏まえ、60歳前の7割水準に設定するよう求めた。つまり「3割カット」だ。

 それでも再任用で主流だった短時間勤務が定年延長でフルタイム勤務となれば、人件費が膨張するのは避けられまい。厳しい財政事情との整合性をどう図るか‐は難問だ。役職定年制にしても、どんな非管理職のポストを用意するかで、それこそ士気に関わると予想される。

 長時間労働の是正など公務員も働き方改革が必要だ。定年延長もその一環とすれば、総人件費の抑制や定員管理の在り方など総合的な見直しが求められよう。公務の非効率や組織の無駄はないか。不断の行政改革が前提であることは論をまたない。

=2018/08/27付 西日本新聞朝刊=

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