幼児にICT教育広がる 福岡県12園、九州30園が導入

西日本新聞

2人一組になり、教室内にある色の付いた物をタブレット端末で撮影する子どもたち 拡大

2人一組になり、教室内にある色の付いた物をタブレット端末で撮影する子どもたち

子どもたちが集めた色の正体を紹介しながら、先生が塗り絵を完成させていった

タブレットを操作、楽しく塗り絵

 2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化されるのを前に、電子黒板やパソコンといった情報通信技術(ICT)を使った取り組みが幼児教育の現場にも広がりつつある。早い時期からICT機器に慣れさせることが狙いだが、時代の先取りだけにとどまらない理由もあるという。タブレット端末を使った教育を取り入れている福岡市の保育園を訪ねた。

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 「あった。オレンジ色、あったよ」「これは茶色かな」。タブレット端末iPad(アイパッド)を手にした園児らの明るい声が教室に響く。カメラ機能を使って室内の机や椅子、かばんなどを撮影、あらかじめ指定された「色」を探しながら歩き回っていた。

 8月上旬、福岡市早良区の原西保育園。5歳児年長クラス(30人)の子どもたちはこの日、2人一組になってiPadで複数の色を集め全員の色を組み合わせて一つの塗り絵を完成させた。どの子もiPadを巧みに操作していた。

 画像はネットワークで共有、完成した塗り絵が教室前方のテレビ画面に映し出された。「お道具箱やキーホルダーもある。すごいね」。色ごとのパーツを拡大し、元になった画像を紹介しながら担任の田中志織先生が一つ一つほめる。「もう1回やりたーい」。子どもたちは歓声を上げた。

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 原西保育園がタブレット端末のアプリ活用を始めたのは2016年。当初は年長児だけだったが、今年から年少児(3歳児)以上の全クラスで月1回、1時間程度行う。30台のタブレット端末を準備して教室には無線LAN環境を整備、保護者の負担は1人当たり数百円程度という。

 「子どもたちは家で親のスマートフォンやタブレット端末を触って動画を見たり、撮影したりしている。幼稚園や保育園でははさみの使い方は教えるのに、ICT機器の使い方は教えない。それは違うと思った」。北口雄也理事長は導入のきっかけをそう語る。

 実際に使わせてみると、苦手な子はほとんどおらず、外で寝そべったり、2台を並べたりして撮影するなど、子どもならではの感性で自由に使いこなす姿に感心するという。

 同様のアプリは5月現在、福岡県内12の幼稚園、保育園で導入。九州では約30の園で利用されている。

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 ICT教育は幼児期から必要なのか-。塗り絵の教材アプリを開発した「スマートエデュケーション」(東京)の池谷大吾社長は「保護者から『園でゲームをやらせるのか』と必ず言われる」と苦笑する。

 アプリは、単に遊びのゲームをするためでも、ひらがなや計算といった勉強を教える早期教育でもない。「ICT機器の正しい使い方を学び、幼少期に必要な能力の土台を養わせる活動。将来、避けては通れないもので早すぎることはない」と話す。

 取り組みでは、始めに破損しやすいタブレット端末を乱暴に扱わないことを先生が子どもたちと約束。未知の機械を前に、子どもたちは目を輝かせる。

 ただ、すぐには触れさせない。先生が話している時は勝手に触らないよう説明。注意を受ける子もいるが、ほとんどは素直に聞く。先生の言葉に従って一斉に電源を入れ、必要なアプリを開いて次の指示を待つ子どもたち。物を大切にし、人の話を聞くという基本的な指導で、原西保育園をはじめ他の園も含めて端末の破損事例はないという。

 同園ではクラス全員に端末は行き渡るが、あえて2人一組で使わせることが多い。独占したくなる気持ちを抑え、譲り合いの心を育てるためだ。池谷さんは「力を合わせて一つの作品を作り上げる活動を通し、創造力とチームワーク力が育つ」と狙いを説明した。

 クレヨンでのお絵描きやはさみを使った工作で子どもの創造力を育むように、タブレットを使って創作活動をする。アナログからデジタルへと使う道具は変わっても、幼児教育の根幹は大きく変わらない。ICTが教育にもたらす可能性は今後も広がるのだろうと感じた。

教育のICT化 小中学校などで2020年度から順次導入される新学習指導要領では、情報モラルを含む「情報活用能力」を学習の基礎となる資質・能力と位置づけ、積極的なICTの活用を求めている。小学校ではコンピューターで文字を入力するなどの基本的操作を習得すること、中学では技術・家庭科でプログラミング、情報セキュリティーに関する内容を充実させることなどが明記されている。そのためにICT環境の整備は急務で、18年度からの5年間で(1)児童生徒向けのコンピューターを3クラスに1クラス分程度整備(2)超高速インターネット及び無線LANを100%整備(3)ICT支援員を4校に1人配置-などの数値目標を掲げている。

=2018/08/26付 西日本新聞朝刊(教育面)=

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