障害者雇用不正 「共生社会」掛け声だけか

西日本新聞

 この数字には、あきれるほかない。不正の実態は思った以上に深刻だった。「共生」をうたった障害者基本法は空文化し、安倍晋三政権が掲げる「1億総活躍社会」も掛け声だけに終わっていないか。政府には改めて猛省と原因の究明、再発防止の徹底を求めたい。

 中央省庁による障害者雇用の水増し問題で、政府は不正が33機関中27機関に及び、昨年雇用したとされる約6900人のうち、3460人が水増し算入されていた、と発表した。

 簡単に言えば、中央省庁の8割で不正が行われ、実際に雇用された障害者は公表された数字の半数以下、法定基準(公表当時は2・3%)を上回っていたという雇用率「2・49%」も、実際は「1・19%」で、大うそだった-という構図である。

 省庁別では、水増し数が国税庁で千人超、国土交通省や法務省で500人超などと、実際の雇用率が法定基準を大きく下回り1%未満の機関も多かった。

 政府は原因について「故意か誤解に基づくものか、今の段階で判断するのは困難」(加藤勝信厚生労働相)としている。

 しかし、これまでの報道では「障害者手帳を持つ人」と「指定医の診断で障害が認められた人」に限定された国の雇用ガイドラインを、大きく逸脱した運用が次々に浮かんでいる。

 「健康診断結果を基に本人に確認せずに算入した」(国交省)「本人が書いた健康状態や病名を基に判断した」(法務省)といった事例だ。これらの中には、障害者手帳を持たない糖尿病やがんの人を含めたケースもあるようだ。多くの省庁が長年、ノルマ達成のために、ガイドラインを意図的に拡大解釈していた疑いが強い。

 政府は問題の検証作業とともに、障害者の新たな雇用枠を早急に設けるべきだ。

 気掛かりなのは、障害者を「共に社会で働く仲間」として尊重する意識が、霞が関で欠落していないか、という点だ。国の障害者施策の基本理念を確認しておきたい。

 「全ての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現」

 障害者基本法の第1条で規定され、今年の障害者白書でも「職業を通じた社会参加が重要」と強調されている。安倍政権の「1億総活躍社会」も、これを包含したスローガンである。

 2年後には東京五輪・パラリンピックが控える。そこでは、日本が国際社会に向かって平和の尊さや「共生社会」の素晴らしさを発信する役割を担う。その使命も見据え、政府全体として意識改革を進めるべきだ。

=2018/08/30付 西日本新聞朝刊=

PR

PR

注目のテーマ