佐賀大そばの学生食堂半世紀 マスター卒業 「感謝しかない」卒業生を後継者に

西日本新聞

 佐賀大学のそばで45年もの間、学生向けの食堂を営んできた浦部義男さん(70)が31日、店主を引退する。時代の変化に対応しつつ、黙々と厨房(ちゅうぼう)に向かってきた。学生たちからは「マスター」と親しまれる存在だった。「寂しいけれど、体力が続かん」。若者の胃袋を満たしてきた名物の味はかつて常連客でもあった佐賀大OBに引き継がれ、店の営業は続けるという。

 「マスター、いただきます」。男子学生が大盛りの白飯を口にかき込むと、厨房の浦部さんは目を合わせるわけでもなく、「はい、どうぞ」と応じた。

 店のカウンターに小さな木箱。食べ終えた学生は木箱に紙幣を入れると、箱にある硬貨を幾つか手に取って帰っていく。1人で調理する浦部さんは、そこに目をやる余裕はない。料金の支払いは、学生との信頼の上に成り立つ。

 45年ほど前、浦部さんは大学北側にあった学生食堂「さち」を継いだ。大学周辺の道路拡張工事に伴い、約10年前に大学東側の現在地に移転し、店名を「宇良辺(うらべ)」と改めた。

 長年営業を続ける中で、新たなメニューも加えた。壁に掲げられた木札には「カツ丼」「ちゃんぽん」と定番が並ぶ中に、「ハラルセット」の文字。ほかの料理の下にも幾つか「H」の木札がある。イスラム教の戒律で食べられない豚肉などを除いた「ハラル料理」だ。

 佐賀大にも留学生が目立つようになった。「食べる場所がないとかわいそうでしょ」と浦部さん。普段は口数が少なく、料理に専念しているが、インドネシアの男子留学生には珍しく声を掛ける。「勉強はどうですか」

 サッカーのユニホームに晴れ着…。学生たちと一緒に納まった写真数十枚を壁の一面にびっしり貼っていた。今月に入り、思い出の詰まった写真を一枚一枚はがした。代わりに、引退を知った在学生や卒業生から贈られた花束が飾られている。

 9月から屋号とレシピを含めて店を引き継ぐのは、佐賀大生時代に食べに来ていた実岡庄平さん(43)。浦部さんは「お客さんにかわいがってもらい感謝しかない。新しい店主のカラーに店を染めてほしい」と願う。

=2018/08/30付 西日本新聞夕刊=

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