僕は目で音を聴く(19) 若い医者の対応にあぜん

 また病院で体験した話です。先日のお盆休み中、急に体調を崩したので、初めて行く大きな病院で診察を受けました。診察の終了時間が近かったためか、受付の人も正直、親身な感じではなかったのですが…。

 もちろん、受付で耳が聞こえない、ということを伝えた上で、診察室に入りました。若い男性の医者でした。困ったのは、とにかく早口で問い掛けてきたこと。一生懸命、唇の動きを読もうとしても、あまりに早口なので理解できません。

 「すいません、耳が聞こえないので、ゆっくり話してもらえますか?」と申し出ると、すごくいらだったような顔で、今度は大声で話しかけてきます。驚き、戸惑いました。何とか一生懸命、唇を読んで、話の3割ぐらいは理解しました。

 すると彼が「耳が遠いんですか?」と言うのです。今度はびっくりしたと同時に、とても悲しい気持ちになり、こう訴えました。「私は耳が遠いのではありません! 耳が聞こえないんです! 私は声を聞いていません。唇を読んでいます。だからゆっくり話してもらうか、紙かパソコンを使って筆談をしてほしいです!」-。

 彼は何も言えない様子で声のボリュームを下げましたが、それでも早口なままでした。

 いろんな患者さんと接するはずなのに、聴覚障害者とは触れ合った経験がなかったのでしょうか。盆休みだったので、経験の少ない臨時の医者だったのかもしれません。でも正直、コミュニケーションも取れない人に“命を預ける”気にはなりません。看護師さんとのコミュニケーションは大丈夫でしたが…。

 そもそも、聴覚障害があるという急患の「情報」がなぜ肝心の医者には共有されなかったのでしょう。受付で一度話したり、紙に書いたりした病状を、診察の際には医者に一から説明しないといけないというのも、よくあることです。具合が悪い、弱ったときに頼る病院だからこそ、患者側の気持ちに寄り添い、向き合ってほしいものです。
 (サラリーマン兼漫画家、福岡県久留米市)

 ◆プロフィール 本名瀧本大介、ペンネームが平本龍之介。1980年東京都生まれ。2008年から福岡県久留米市在住。漫画はブログ=https://note.mu/hao2002a/=でも公開中。

※平本龍之介さんによる漫画「ひらもとの人生道」第1巻(デザインエッグ社発行)が好評発売中!

=2018/08/30付 西日本新聞朝刊=

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