「暴力団員立入禁止」 襲撃事件の恐怖越え「暴排標章」掲示率56%に 工藤会壊滅作戦4年

西日本新聞

 特定危険指定暴力団工藤会の本部がある北九州市の繁華街で、暴力団組員の入店を禁じた「暴排標章」を掲げる飲食店が増えている。県警が工藤会壊滅作戦に着手して11日で4年を迎え、組員数は610人とピーク時から半減。工藤会による飲食店関係者の襲撃事件後に一度は外した標章を再掲する店も出始めた。今も掲示をためらう店は多いが、女性経営者が街のイメージ回復へ動きだすなど変化の兆しが見える。

 「また張ってもいい」。

 同市小倉北区で飲食店を経営する男性は今春、県警の呼び掛けに応じた。男性は標章制度が始まった2012年8月に掲示したが、直後に、掲示店への脅迫や入居するビルへの放火など事件が続発。「ビルに迷惑を掛けてはいけない」と外した。

 それから6年。店の入り口横の目立つ場所に「暴力団員立入禁止」と大きく記した標章を張った。「この街で暴力団の存在感はなくなった」と淡々と語った。

 北九州地区の昨年末の掲示率は56%と2年ぶりに前年同期比で1ポイント増えた。ただ、依然として、暴力の影におびえる店もある。

 市内でスナックを営む女性は標章をカウンター奥に張っている。6年前、入居するビルの関係者が襲撃され、「何かあったとき、従業員を守れないから」と声を落とす。別のスナック経営者は「服役を終えた組員が街に出て悪さをするのではと思うと、怖い」と掲示していない。県警幹部は「恐怖心は根強く、無理にはお願いできない」と話す。

 街では、勢いが衰える工藤会に代わるかのように新たな勢力が伸長する兆しもある。市内のキャバクラ店では数年前から、入れ墨を見せながら騒ぐ集団が目撃されている。何者かは不明だが、「半グレ(不良集団)」との情報もある。

 県警が7月、繁華街をうろついて周囲を威圧したとして県迷惑防止条例違反の疑いで逮捕した工藤会系組長らは飲食店関係者に「半グレみたいなやつが多いだろ。こうして俺らが街を歩かないといかんのや」と声を掛けたといい、県警は新たな動きに目を光らせる。

 「暴力の街」-。根強いイメージを払拭(ふっしょく)し、安心して楽しめる街をPRしようと1月、飲食店の女性経営者ら十数人が「小倉織姫の会」を結成。メンバーの一人は「次は自分がやられると本気で思った」と、襲撃事件が相次いだころの恐怖を振り返る。目立つ行動は控え、同業者との付き合いも避けた。一方で、客足が減る街に心を痛めていた。

 会は街の清掃活動へ参加し、夏には浴衣姿で打ち水をするイベントを催した。「やっと安全になりつつある。今こそ何とかしないと。ママさんの横のつながりを広げ、街の元気を取り戻したい」

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【ワードBOX】暴力団排除の標章制度

 改正福岡県暴力団排除条例に基づき2012年8月に開始。福岡、北九州、筑豊、筑後の4地区にある繁華街を「暴力団排除特別強化地域」に指定している。暴力団の立ち入りを禁止する居酒屋やスナックは、標章を掲示する。組員が無視して入店すれば県公安委員会が中止命令を出し、従わない場合は50万円以下の罰金が科せられる。

=2018/09/11付 西日本新聞朝刊=

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