防災・減災につながる学問 角縁進氏

西日本新聞

◆地学教育

 最近、日本列島で自然災害が頻発している。巨大地震、大津波、大型台風、集中豪雨、土石流、斜面崩壊など、ありとあらゆる災害である。

 これらの現象を科学的に解き明かすのは、「地学」という分野である。「地学」とひとくくりにまとめられているが、物理学、化学、生物学、数学などを用いて「地球や宇宙」の真理を科学的に解き明かす学問である。それで得られた結果は、われわれの身近な自然を知る手がかりになる。

 自然は気まぐれである。「理論」と呼べる物を構築することは地学では難しいが、自然災害の危険度を予測することはできるようになってきた。地学を学ぶことは防災・減災につながる。しかし問題になるのは「地学」を学ぶことが今の学校教育では難しいということである。

 戦後の一時期を除き、地学は高校での必修科目となっていない。大学入試センター試験の変更によって、現在「地学基礎」を開講する高校が増えており、受験生は全国で約4万人。この数は「物理基礎」を超えているが、まだまだごく一部である。地学基礎の内容は非常に底が浅く、これを学んで「地学」を学んだことには到底ならない。本当に必要なのは自然災害王国である日本で、どのような場所でどのような災害が起こるのか、そのメカニズムや発生したときの対処法など、「生きる力」の学習なのである。

 もう一つの問題は、地学を専門として教えられる教員が極端に少ないということである。福岡教育大(福岡県宗像市)などには、以前は高校の理科教員養成コースである「特別教科教員養成課程 理科 地学専攻」があったが、今や全国の教育学部で特別教科教員養成課程は廃止されてしまった。理学部のいわゆる地質学科でも、教員免許法の改正による教職分野の取得単位の増加と、文科省による審査の厳格化により教員免許の取得が難しくなっている。

 九州は活火山が多く、活断層も多数存在する。6月に大阪で起きた地震は、1995年の兵庫県南部地震の余震とも考えられるというから驚きである。自然現象の時間スケールと人間の時間スケールの違いを実感するのも地学こそである。2005年の福岡県西方沖地震の余震が明日起こってもおかしくないのである。高校での地学必修化を切に願いたい。

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 角縁 進(かくぶち・すすむ)佐賀大教育学部教授 1964年生まれ、山口県下関市出身。新潟大自然科学研究科博士課程修了。博士(理学)。専門は火山地質学と地学教育。

=2018/09/16付 西日本新聞朝刊=

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