僕は目で音を聴く(21) 手話は最初、恥ずかしかった

 私が初めて手話を覚えたのは中学卒業後、ろう学校(現在の特別支援学校)に入学してから。それまでは地域の小中学校に通い、唇の動きによって相手の話を理解し、こちらからは言葉で伝える口話を主に使っていました。中学校の文化祭で「おはよう」「ありがとう」など簡単な手話を教えてもらったことはありますが、ろう学校で本格的な手話に出合い、最初は戸惑いました。手に合わせて表情も加えるので、なじみのなかった私には違和感があったのです。

 電車やバスの中で、友達が手話を使っていると、私の方が気恥ずかしくなり「やめてくれ」とお願いしたぐらい。自分でなかなか覚えようとしなかったのは恥ずかしい気持ちがあったからかもしれません。

 入学して2~3カ月たったころ、同級生が「おまえ、いいかげんに手話を覚えろ!」とキレて殴りかかってきたので、けんかになりました。それが悔しくてノートに手話のイラストを描いて必死に覚えたものです。

 気がつけば半年で、ある程度は友だち相手に使えるようになりました。恥ずかしさも消え去っていました。中学では分からなかった授業の内容や周りの話がスーッと頭に入るようになったので孤独感もなく、とてもうれしかったです。一般に手話が分かる人はそう多くなく、例えば「あの人、○○さんに似ているよね」みたいな、その人が聞いたら気を悪くしかねないような話も、手話だったら平気でできますし…(すみません)。

 今思えば、私が手話を使う人に感じていた「恥ずかしさ」は偏見でした。恥ずかしい存在だと見下していました。手話を覚えて初めて、その愚かさに気付いたのです。心から感情を解放しなければ豊かな表情はできません。裏表のない気持ちをそのまま形にして伝え合う-。私もそんな「世界」が楽しいと思うようになりました。口話も使いますが、私の第一の言語は手話。たくさんの情報と真心が伝わるこの手段に誇りを持って、これからも生きていきたいです。
 (サラリーマン兼漫画家、福岡県久留米市)

 ◆プロフィール 本名瀧本大介、ペンネームが平本龍之介。1980年東京都生まれ。2008年から福岡県久留米市在住。漫画はブログ=https://note.mu/hao2002a/=でも公開中。

※平本龍之介さんによる漫画「ひらもとの人生道」第1巻(デザインエッグ社発行)が好評発売中!

=2018/09/13付 西日本新聞朝刊=

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