「老人」に代わって「高齢者」という言葉が使われ始めたのは1980年前後から…

西日本新聞

 「老人」に代わって「高齢者」という言葉が使われ始めたのは1980年前後から。お年寄りを蔑視しないという意味合いで広く受容されてきた。それが今ではどうか

▼認知症、介護、孤立死…。高齢者というと負のイメージが先行する。75歳を境に前期と後期に選別する行政の線引きも不自然。近年は「多死社会」という新語も登場し、為政者が「国難」と叫ぶ。その声に寂しさや疎外感を覚える人もいよう

▼人口動態でみると、昨年の死亡数は134万人、出生数は94万6千人。両者の差は約40万人に膨らんだ。しかし、戦後長らく人口増と長寿を両立させてきた日本で死亡数増が続くのは当然。問題の根源は少子化にある

▼100歳以上の長寿者は今月15日現在で6万9785人と過去最多を更新。今も元気で農業などに従事する人は多い。65歳以上の就業者は807万人に達し、社会のさまざまな分野で「老人」が活躍している

▼「老」は元来奥深い言葉だ。物事をよく知る人、熟練者らも指す。中国語では「年季が入って価値が増す」という意味があり、先生は「老師」、ベテランは「老手」などと表現される

▼超高齢社会が抱える問題は多い。けれども長寿は喜ぶべきこと。この国が発展、成熟した証しでもある。その価値を前向きに捉えることも大事だろう。あすは秋分。日増しに穀物が実り、山々が鮮やかに色づいていく姿は人の年輪とも重なる。

=2018/09/22付 西日本新聞朝刊=

PR

春秋(オピニオン) アクセスランキング

PR

注目のテーマ