米中貿易戦争 不毛な制裁の応酬やめよ

西日本新聞

 貿易戦争をこれ以上、先鋭化、泥沼化させてはいけない。

 トランプ米大統領は、中国が米企業への技術移転強要などで知的財産権を侵害しているとして、中国製品に第3弾の制裁関税を発動する。来週24日から、中国からの輸入品2千億ドル(約22兆円)相当に10%の追加関税を課すという。

 トランプ氏が方針を表明すると、中国も即座に報復関税を課すと発表した。米国は制裁を一段とエスカレートさせる構えも見せている。影響は米中の企業や消費者の不利益にとどまらず、世界経済の混乱を招きかねない。さらに米国は中国に貿易問題に関する閣僚級協議を打診しておきながら、開催前に発動を表明した。もはや米国には分別も良識も自制も不在なのか。

 米国は中国の知的財産権侵害を名目に7~8月に2回、計約500億ドル相当の輸入品に25%の追加関税を発動した。中国も同規模の報復措置に出た。

 第3弾は中国製品5745品目が対象だ。照明器具や家具、電気掃除機、ハンドバッグなどが含まれ、米国内でも追加関税で国内販売価格が上昇するとの反発も強い。中国は今回も600億ドル相当の米国製品に追加関税を課して報復する構えで、貿易戦争は深刻の度を増す。

 看過できぬのは、米国のムニューシン財務長官と中国の劉鶴副首相が27~28日に貿易問題の協議を行う段取りになっていたのに、その結果を待たず米国が制裁発動を表明したことだ。

 トランプ氏に紛争収拾の意思はあるのか、疑問だ。言い掛かり的に相手国をどう喝し譲歩を迫る。意のままにならねば圧力を強める。子供じみている。

 背後には、11月の中間選挙対策として、自らの岩盤支持層に対中強硬姿勢を演出する思惑があるのだろう。選挙を前にトランプ氏は、米国第一主義ばかりか、「選挙戦勝利第一主義」に成り下がってはいないか。

 制裁と報復の応酬が問題なのは、国際分業が寸断の危機にひんするからだ。中国には日米欧の企業の生産拠点が集まっている。これらの企業の円滑な生産活動を阻害しかねない。不毛の連鎖を即刻断ち切るべきだ。

 もちろん中国の不公正な貿易慣行は是正の必要がある。ただ、それは多国間の枠組みで行うべきだ。折しも欧州連合(EU)の欧州委員会は世界貿易機関(WTO)の改革案を発表した。中国を念頭に産業補助金など市場歪曲(わいきょく)措置の是正、紛争処理機能強化などが骨子という。

 加盟国と協議を深め、世界貿易に秩序を取り戻す一歩としたい。米国の独善的な制裁は世界経済、そして自国に大きな付けとして跳ね返りかねない。

=2018/09/22付 西日本新聞朝刊=

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