観光立国 東アジア交流を見据えて

西日本新聞

 東アジアの大交流時代が到来した-。こう形容しても過言ではなかろう。

 中国、韓国の人々を中心に、日本の隣国・地域からの訪日客が急増している。年間客数は2千万人を超え、かつてと比べると驚異的ともいえる規模だ。

 日本経済への波及効果に加えて、観光を通じた市民同士の相互理解が大きく進みつつあることにも着目し、交流の輪を一段と広げていきたい。

 日本政府観光局によると、増加が続く訪日客は昨年、全体で2869万人に達し、この5年間で3・4倍に膨らんだ。ビザ要件の緩和や免税品目の拡大、さらには中国の経済発展などが追い風になっている。

 国・地域別では、中国、韓国、台湾、香港の人々が全体の7割を占める構図が続き、昨年はこの東アジア4カ国・地域からの訪日客が2129万人(前年比21・9%増)に上った。

 今年は相次ぐ災害の影響で伸び率が鈍化しているものの、1~8月の東アジアからの来客は1591万人(全体では2130万人)と推計され、昨年をさらに上回るペースだ。

 年間4兆円規模に膨らんでいる訪日旅行消費額も、これらの人々がけん引している。

 平成30年版観光白書(今年6月発表)はこうした動きを詳細に分析し、「観光が日本の経済成長の主要エンジンになりつつある」と結論づけている。

 訪日リピーターによる九州を含む地方観光の広がり、彼らが帰国後にネット通販で日本製品を買う「越境電子取引」の拡大、それに伴う国内産業活性化など「インバウンド効果」が幅広い分野に及んでいるからだ。

 日中、日韓が歴史や領土問題で対立していても訪日ブームが続く背景には、対日観の変化がある。旅行先で日本人の誠実さや平和志向に触れ「感動した」という声を聞く。親日の空気は年々広がっているとみられ、2年前の熊本地震や今夏の災害では東アジアから義援金やお見舞いの声が多く寄せられている。

 日本人の海外渡航先は1位の米国に次いで中国、韓国、台湾が上位に並ぶ。年間の渡航者数は、それぞれ300万~200万人の規模で推移している。

 近年は若者を中心に“海外離れ”が進む傾向もみられる。留学、修学旅行、文化交流など、さまざまな分野で、日本から東アジアへ向かう人の流れも、さらに広げていきたい。

 2006年に制定された観光立国推進基本法は、観光を国家戦略に位置づけ、その持続的な発展によって「恒久の平和と国際社会の相互理解を増進する」と、うたっている。その趣旨を改めて見据えたい。

=2018/09/24付 西日本新聞朝刊=

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