【産業医が診る働き方改革】<23>目に見えない障害も

西日本新聞

 「高次脳機能障害を知っていますか?」。こう尋ねられた西山和夫さん(45)=仮名=は、初めて聞く言葉に戸惑っていました。西山さんは電子部品メーカーの資材部で原材料の調達や管理を担当しています。「仕事に集中できず、ミスが多い」と産業医を務める私に相談がありました。

 実は、面談は2回目。3カ月前にくも膜下出血を発症して入院、手術を受けました。幸い、まひなどの後遺症もなく3週間で退院。自宅療養を経て、発症から約2カ月で、私との面談を経て復職したところでした。

 上司によれば、ぼーっとした感じが見受けられるものの、以前と同じようにデータ入力や書類の作成、部下への指示や上司への報告も問題ないし、同僚と世間話もしている。ただ、取引先との連絡や納入時期を忘れることがあり、相手からの連絡で職場が大慌てすることになってしまうとのこと。周囲は「復職後の疲れ」と受け止めていたようですが、本人も不安やストレスが大きくなっているため、2回目の面談となったわけです。

 面談後、私が紹介した大学病院を受診し、検査入院をしました。知能面に問題はなく、記憶に関する障害があることが判明し「軽度の高次脳機能障害」と診断されました。病気や事故などによって脳がダメージを受けたために、集中力や記憶力の低下など認知機能面に見られる障害です。

 主治医から本人に、本人の同意を得て上司と私に病状の説明があり、職場での支援を検討していくこととなりました。記憶の補助としてスマートフォンの録音機能やメモを活用し、複数業務の同時並行は避けるようにしました。特に、業務に関する重要事項は、同僚とパソコンでも情報共有することでトラブルはなくなりました。今も元気に働いています。

 高次脳機能障害は外見からは分かりにくく、軽度の場合は見過ごされ、西山さんのように退院後の生活や仕事で困り事が出てきて気づくケースがあります。職場でもこうした病気や障害について知り、適切な働き方を支援していくことが重要です。

 (佐伯覚=産業医大教授)

=2018/09/17付 西日本新聞朝刊=

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