クラフトビール、韓国でブームに 「爆弾酒」を敬遠…変化する若者文化

 ガツンとくる苦みやフルーティーな香りなど小規模醸造所が個性的な味を競う「クラフトビール」が、韓国でもブームになっている。かねて「薄くて物足りない」との評判もある韓国の大手メーカーのビール。日本と同様、消費量は減少傾向にあるが、クラフトビールは醸造所数や消費量が伸び続けている。背景には、酒税法の規制緩和だけでなく、若い世代の飲酒文化の変化もあるようだ。
 (釜山・丹村智子)

 9月上旬、釜山市最大の国際展示場「ベクスコ」の屋外展示場で、初めてクラフトビールのイベントが開かれた。釜山市と近郊の17社が出店し、約80種類の銘柄が並んだ会場は、老若男女でにぎわっていた。

 「クラフトビールはそれぞれ味が違うし、多様性を求める若者や女性に合っている」。仕事帰りの女性4人グループは、同じ職場の飲み仲間。普段は大手の国産ビールや焼酎も飲むが、この日は各自別の銘柄を飲み比べて楽しんでいた。

 韓国クラフトビール協会によると、ビール市場全体に占めるシェアは1%にとどまるが、国内の小規模醸造所は2014年の54カ所から、17年の95カ所と3年でほぼ倍増。消費量も3年連続で前年比40%増と急成長している。

 背景に酒税法改正による規制緩和がある。02年のサッカーワールドカップ日韓大会を機に、韓国では小規模醸造所でのビール製造・販売が可能になった。ただし、製造者が直営店などでしか消費者に売れず、販路拡大は困難だった。03年に蔚山市で製造を始めた「WHASOO BREWERY」の李承宰(イスンジェ)さん(31)は「多くの醸造所が数年でつぶれた。うちも電気代が払えないほど厳しい時期があった」と振り返る。

 反転攻勢のきっかけになったのは、14年の改正だ。小売店や飲食店への卸売りも可能になり、商機が広がった。釜山市の「WILD WAVE」は、この波に乗った醸造所の一つ。ビール作りの同好会で出会った若者4人がレシピを開発し、外部の醸造所で15年から委託製造・販売を始めた。商品はヒットし、17年には自社工場を建設。今や国内200カ所に加え、海を越えて福岡にも商品を卸す。

 代表の李滄敏(イチャンミン)さん(28)は「韓国でも経済が成熟して海外旅行に出かける人が増えたことなどから、少し値段は高くても、味の多様性を求めるようになったのではないか」と分析する。

 「飲み会」文化も変わりつつある。韓国の宴席では、ビールと焼酎などを混ぜた「爆弾酒」を一気飲みする習慣がある。だが近年はこうした飲み方が若者に敬遠され、飲み会の代わりにファミリーレストランでの食事や映画鑑賞をする会社もある。釜山市のクラフトビールイベントを総括した玄星徳(ヒョンソンドク)さん(46)は「集団で飲むよりも、個々でビールの味を楽しむ文化が広がっている。クラフトビールがこうした嗜好(しこう)にうまくはまった」と分析する。

 ブームに乗って、既に財閥や海外メーカーも韓国クラフトビール業界に進出。WHASOOの李さんは「本格的なブームはこれから。あと5年で生き残れるかが勝負になる」。今の人気商品は、コーヒーのような香りと柔らかい口当たりが特徴のスタウトビールと、ユズの皮で爽やかな風味をつけたペールエールビール。「味の特徴と質を守り、地域で愛され、マニアに支持される日本の酒蔵のような存在を目指したい」と話す。

 若者の就職難が続く中、業界では若い世代が夢を追い、新たな道を切り開いている。大企業志向が根強い韓国社会。クラフトビールブームは、生き方の多様化を象徴する社会現象の一つかも知れない。

 ▼クラフトビール 小規模な醸造所で、地域性や個性を生かして作られたビール。米国や日本でも流通量が増えている。大手メーカーを中心に市場で流通量が多いのは口当たりがすっきりとしたラガーだが、小規模醸造所はより高温で発酵させるエールで個性を打ち出す所が多い。苦みが強くアルコール度数が高めのIPA(インディアン・ペール・エール)や、濃厚で甘みがあるスタウトはエールの一種。イチゴやユズなどの果汁を加えたものも。近年は大手メーカーもこうした「クラフトビール」の製造に乗り出している。

=2018/09/24付 西日本新聞朝刊=

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