沖縄知事選 この民意を無視できるか

西日本新聞

 繰り返し発せられる、沖縄の民意-。その重さを政府は無視できるのか。

 翁長雄志(おながたけし)知事の死去に伴う沖縄県知事選で、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設に反対する玉城(たまき)デニー氏(58)が、安倍晋三政権が強力に支援した候補を破り、初当選を果たした。

 最大の争点となった辺野古移設の是非について、沖縄県民は前回知事選に引き続いて「ノー」の意思表示をしたといえる。

 安倍政権は、選挙結果にかかわらずに辺野古移設を推進する構えだ。しかし、ちょっと待ってほしい。いくら外交・安保政策が政府の専権事項だとはいえ、ここまで明確に示される地方の声に耳を傾けようともせず、国家の力で押し切ることが民主主義の本意にかなっていると言えるだろうか。

 立ち止まって、本当に「辺野古移設が唯一の解決策」なのかどうか、再検討すべき時だ。

 ●既成事実化に抗して

 辺野古では、すでに埋め立て区域の一部が護岸で囲まれている。青い海を白い護岸がくっきりと区切り、内部への土砂の投入を待つかのような状況である。

 4年前に「辺野古への新基地阻止」を掲げた翁長知事が当選して以来、政権は沖縄との対話で問題を解決するのではなく、ひたすら移設を既成事実化することで、沖縄県民に無力感を味わわせ、移設反対の意思を弱めようとした。辺野古の護岸はその象徴だ。県民の間に「どうせ新基地はできるのでは」と、一定の諦め感が広がっていたのも事実である。

 しかしそれでも、沖縄県民は今回、「反対」を明確に示した。その意思の強さは驚くほどだ。

 政権が支援する候補は、選挙戦で辺野古への新基地建設への賛否を明示せず、生活支援や経済振興を前面に打ち出した。政権の意向を受けた「争点ぼかし」戦術とみられたが、有権者からは「姑息(こそく)」と受け止められたようだ。

 安倍政権は、菅義偉官房長官が度々沖縄入りするなど、異例の態勢で組織戦を展開したが、それも固い民意の前には通じなかった。

 ●基地負担の再検討を

 翁長県政は、数々の訴訟を提起して辺野古移設の阻止を図ってきた。しかし、これまで裁判所は政府の主張に沿った判断を示し、県は手詰まり状態に近づいている。

 県は8月に埋め立て承認を撤回した。これに対し、政府は裁判所に撤回の効力停止を申し立てる方針だ。ここで主張が認められれば、政府は辺野古への土砂投入に踏み切るとみられている。

 このままでは、さらなる混乱が予想される。工事現場で当局側と住民の衝突にでもなれば、県民の反発は一層強まり、日米安保体制にも悪影響を及ぼしかねない。

 安倍政権は「辺野古移設が唯一」の固定観念を捨て、裁判所への申し立てや土砂投入をいったん据え置き、もう一度、沖縄と本土の基地負担のあり方や、日本国内における米軍展開の将来像などについて、検討すべきではないか。

 今回の選挙戦では、玉城氏だけでなく政権支援の候補も、日米地位協定改定の必要性を訴えた。在日米軍の特権的地位を認めた地位協定の改定は、移設容認か反対かを問わない県民の総意といえる。

 政府は早急に協定改定を米国側に提起すべきである。まさか「支援候補が勝手に言った」などとの言い訳はできまい。

 ●本土住民も考えたい

 知事選で政権支援の候補が敗れたことは、「沖縄に寄り添う」と口では言いながら、実際には補助金や経済振興策をちらつかせ、「アメとムチ」で地方を従わせようとする安倍政権の政治姿勢に対する不信の表れだといえる。

 これは自民党総裁選の地方票で石破茂氏が健闘したことにも通じる。森友・加計(かけ)問題での批判を受け「丁寧」「謙虚」などの言葉を連発しつつ、異論に耳を貸さない強引な政治手法を続ける安倍政権に対し、地方から異議申し立ての声が上がり始めたのではないか。

 重ねて考えておきたいのは、本土の住民である私たちの関わり方だ。国内の米軍専用施設の約7割が沖縄に集中する現状に、どう向き合うか。無関心は結果的に「沖縄への基地押し付け」を容認し、民意を無視することにもなる。

 国内の米軍基地の規模は現状で適正なのか。本土が負担の一部を引き受ける方策はあるのか。「沖縄が反対している」と遠くから眺めるのではなく「じゃあ私たちはどうする」と踏み込み考えることが、沖縄と本土の溝を埋め、基地問題解決を促す力となるはずだ。

=2018/10/02付 西日本新聞朝刊=

PR

社説 アクセスランキング

PR

注目のテーマ