移動図書館、福岡市なぜない? 団体貸し出しで代替 周辺自治体では快走、見守り効果も

西日本新聞

 「近くの公園や学校に来てくれる『移動図書館』を福岡市にも早急に導入してほしい」。特命取材班に、市内の主婦(61)から要望が寄せられた。移動図書館は、車などの交通手段がなかったり、図書館が遠かったりする人にとっては便利な図書サービスの一つだ。ただ、福岡市にはないという。近隣自治体の状況も踏まえながら事情を探った。

 取材班はまず実際の移動図書館車について調べてみた。9月中旬の夕方、春日市の天田公園。軽快な音楽とともに同市の「たんぽぽ号」が到着すると、乳幼児連れやお年寄りがひっきりなしに訪れた。子どもたちは早速、車のそばで絵本を広げ、大人も小説など目当ての本を熱心に探した。

 たんぽぽ号は1993年に運行開始。計3千冊を載せ、公民館など市内19カ所を毎週火-金曜に巡回している。車は現在3代目だ。

 天田公園は団地内にあり、貸出冊数は巡回先で最多。特に0~12歳、30代、60代以上の利用が目立つという。公園まで徒歩3分の主婦(40)は小学2年の長男と訪れ「図書館がすごく遠くて助かる。スマートフォンで貸し出し予約もできて便利で毎週利用している」と満足げだ。

 その役割は本の貸し出しにとどまらない。「常連のお年寄りを何週も見ないと心配になる。利用してくれた時には『元気ですか』と声掛けしている」と話すのは司書の資格があるスタッフの吉開新子さん(34)。利用者との「距離の近さ」で、地域での見守り役も担っているのだ。吉開さんは6年ほど乗車しているが、児童書からだんだん読む本が変わっていく子どもの成長も感じられるという。

 太宰府市も81年から移動図書館車「すくすく号」を運行中。貸出冊数は年間約6万冊で、図書館全体の1割強を占める人気だ。

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 実態をつかんだところで福岡市総合図書館(早良区)へ。すると、同市でも54年から約5年間、移動図書館車を運行していたことが判明した。当時の実施状況や終了した理由は資料がなく分からなかった。ただ、その代替措置として、同館図書サービス課の担当者は59年から導入した「団体貸出制度」を挙げた。

 この制度は、公民館や集会所、学童保育、高齢者施設などの登録団体が、総合図書館の蔵書から千冊を上限に借りることができるシステム。「地域のミニ図書館のイメージ」(担当者)といい、4月時点で386団体が登録、20年前から倍以上になったという。4カ月に1回、本を入れ替えており、総合図書館1階の団体貸出用書庫からほぼ毎日車で運んでいる。年間の団体貸出は約26万7千冊で、高齢者向けが増えているという。

 なぜ移動図書館車を走らせないのか-。担当者は「移動図書館で地域をきめ細かく回ろうとしても、福岡市のように大きいまちだと間隔が空く。地域住民も絡んだ団体貸出という形で地域には届けている」と説明する。移動図書館を導入する議論はないという。

 ただ、市民の中には「公民館の本は古い」といった声も聞かれる。そもそも、団体貸出の制度そのものや、地域内の登録団体がどこにあるのか周知が徹底されていない面も否めない。

 取材班に意見を寄せた主婦は「市郊外には図書館難民もいるはず。移動図書館車が学校なども回れば、子どもの学力アップにもつながっていくと思うのだが」と考える。団体貸出用の本の運搬で毎日のように、車を動かしているのであれば、周辺市の状況も鑑みて試行的に移動図書館車を走らせ、効果を探るのも「あり」ではないだろうか。

=2018/10/03付 西日本新聞朝刊=

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