沖縄「民意」続く苦悩 知事選から1週間 移設反対、漂う無力感 容認派との溝深く

西日本新聞

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設に反対する玉城(たまき)デニー氏が勝利した沖縄県知事選から1週間余。反対派は移設阻止に向けた動きを強めるが、「民意」に向き合わず移設推進の構えを崩さない政府の姿勢に対し、先行きへの不安もよぎる。一方、県内移設を受け入れ経済振興を目指した容認派には、失望と共に「地域振興を求めることは悪なのか」との葛藤がこみ上げる。基地問題を巡る「対立と分断の構図」は、沖縄に深く横たわったままだ。

 「沖縄の思いを訴え抜いた翁長さんの遺志をしっかりと受け継いでいく」。9日に那覇市で営まれた移設反対を貫いた翁長雄志(おながたけし)前知事の県民葬。参列した宜野湾市の大学院生、元山仁士郎さん(26)は遺影をまっすぐ見つめ、誓った。

 9月の知事選で県民は玉城氏に史上最高の約39万6千票を投じ移設を進める政府に対し、強烈な「ノー」を突きつけた。県民葬では安倍晋三首相の式辞を代読する菅義偉官房長官に、参列者から「来なくていいよ」「帰れ」などのヤジが飛び交った。

 元山さんが代表を務める団体は9月、約9万筆の署名と共に県に「県民投票条例」の制定を請求。元山さんは民意の後押しを得て、実現へ自信を深める。「政府が工事を止める大義になるよう、県民投票で最後の一押しをしたい」

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 移設先となる辺野古沿岸部。県による埋め立て承認撤回で工事は一時止まり、静けさを取り戻している。だが、すでに埋め立て予定区域は真新しい護岸で囲われている。菅氏は知事選翌日の1日の記者会見で言い切った。「政府の考えは何ら変わらない」

 目の前で着々と進む工事を見続けてきた名護市の女性(66)は「移設反対の民意を示しても、国がここから引き返すとは思えない」と力なく語る。

 辺野古にある米軍キャンプ・シュワブ前のテント村に通う宜野湾市の調理師、赤嶺和伸さん(64)には忘れられない言葉がある。昨年12月、米軍ヘリの窓枠が普天間第二小の運動場に落下した日、自身が運営する「子ども食堂」を訪れた同小の女児がつぶやいた。「でも明日も飛ぶんでしょ」

 いくら民意を突きつけても国は変わらない-。県民には怒りと無力感が交錯する。それでも赤嶺さんは9日もマイクを握った。「これが当たり前の未来は残せない。そのために一つずつ民意を積み重ねていく」

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 与党候補の佐喜真淳(さきまあつし)氏は国とのパイプを生かした経済振興を訴えたが敗れた。名護市の食品製造業、玉利朝輝さん(59)には父親が辺野古で経営していた米軍相手のレストランがにぎわっていた記憶が残る。「本当に子や孫の世代のことを考えるなら経済振興を求めるのは当然だろう」

 基地反対か経済振興か-。県民は選挙の度に「二律背反」を突きつけられ、分断される。名護市の男性(55)は「経済発展を求めることは悪いことではないのにこれで容認派は後ろ指をさされる」と眉をひそめる。

 佐喜真氏に投票した豊見城市のタクシー運転手男性(72)は語気を強めた。「県民同士が分断されるのはもうたくさんだよ」

=2018/10/10付 西日本新聞朝刊=

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