僕は目で音を聴く(23) 歯医者はやっぱり苦手です
病院もいろいろありますが、その中で一番苦手なのは歯医者です。「歯医者嫌い」は皆さんも一緒でしょう。機械の音、におい、痛みなど子どもの時から味わっている体験から、大人になっても怖いものです。ただ私が苦手なのは、やっぱり言葉が聞き取れないだけに、さまざまな不安を感じるからです。
まず歯医者はマスクをしている人が多く、唇の動きが読み取れません。筆談をしてくれる人もいますが「書くのはいいから早く終わって」という気持ちの方が勝ることが多いです。
自分は口を開けたまま、治療中の歯が今、どうなっているのか分からないし、次は何をされるのか、という恐怖もあります。感じるのはドリルで歯を削られる鋭い振動だけ。処置中に手を止めるわけにもいかないでしょうから、やはり意思疎通は口話になります。
患者の顔に布をかぶせて治療するところもあり、それが最も恐怖です。視界を遮られ、周りの状況が全く分からなくなります。私は何か話しているような声は漠然と聞こえるのですが、誰かの話し声がすると、もしかして話し掛けられているのかも、と焦ってしまいます。実際は、治療前の歯の点検中、歯の位置を示す番号を、そばにいる歯科助手に教えている、その時の会話が多いです。
歯医者も人間ですので良い人もいれば正直、私と波長が合わないな、と感じる人もいます。でも歯を治療してもらっているので、我慢して身を委ねるしかありません。今は透明なマスクもあるのでせめてそれを着用してもらえばいいのですが…。
知り合いは「歯医者では肩をたたかれるまで気にしない」と言いますが、私のようにどうしても心配になる人もいるでしょう。歯科助手が積極的に筆談でコミュニケーションを取ってくれるところもあり、患者が聴覚障害者の場合は、歯科助手が話を伝える役目を務めてくれれば不安の軽減につながるのでは。目と口はそれだけ大事なんだということを意識してほしいです。
(サラリーマン兼漫画家、福岡県久留米市)
◆プロフィール 本名瀧本大介、ペンネームが平本龍之介。1980年東京都生まれ。2008年から福岡県久留米市在住。漫画はブログ=https://note.mu/hao2002a/=でも公開中。
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=2018/10/04付 西日本新聞朝刊=