「松橋事件」再審やっと 宮田さん、病床で朗報 弁護団「命あるうちに無罪判決を」

西日本新聞

 「おめでとうございます。勝ちましたよ」。最高裁の再審決定を伝えると、寝たきりで言葉も失った宮田浩喜さん(85)の瞳に光が宿ったようだった。松橋(まつばせ)事件での逮捕から33年、待ち続けた再審の扉がようやく開いた。12日、病床の宮田さんに報告した弁護団は「生きているうちに無罪判決を」と訴えた。

 宮田さんは現在、脳梗塞の後遺症と認知症を患い、熊本市の高齢者施設で暮らす。「裁判、勝ちましたよ。(もうすぐ)無罪です」。成年後見人として宮田さんに代わり再審請求した衛藤二男弁護士(65)がベッドで休む宮田さんの左手を握り、最高裁が検察側の特別抗告を退けたことを伝えた。

 宮田さんは、昨年11月の福岡高裁の再審開始決定時から要介護度が4から5に進み、食事や入浴など日常生活全てに介助が必要となった。衛藤弁護士は「高裁の決定を伝えた時はうれしそうに涙ぐんでいたが、(今回は)反応を読み取るのは難しかった」と言う。

 1990年に懲役13年が決まった確定審で宮田さんの弁護人を務め、その後に再審請求を主導した斉藤誠弁護士は取材に対し「今までの長い道のりがようやく実った。安堵(あんど)とうれしさがこみ上げた。宮田さんの思いに応えることができてうれしい」と声を弾ませた。

 一方、再審請求から今回の決定まで約6年7カ月を費やした。昨年9月には、再審請求人になっていた宮田さんの長男貴浩さん=当時(61)=も父の無実を信じたまま病死した。

 12日、熊本市内で記者会見した主任弁護人の三角恒弁護士(64)は「時間の引き延ばしと思うくらい特別抗告は無意味だった。法律上の権利ではあるが、宮田さんの年齢や体調を考えれば早く再審公判をすべきだった」と検察側の姿勢を批判した。

 弁護団は今後、やり直しの裁判を年内に開始するよう裁判所側に要望する方針。三角弁護士は「検察も今回の決定に従い、認めるところは認めて速やかに無罪判決が出るよう協力してほしい」と力を込めた。

「厳粛に受け止める」

 最高検の落合義和刑事部長の話 決定を厳粛に受け止め、再審公判で適切に対処したい。

「コメントできず」 熊本県警

 熊本県警刑事企画課は「決定文が届いておらず確認できていないのでコメントできない」としている。

「次は大崎事件だ」 原口さん弁護団、再審決定を歓迎

 「次につながる良い決定。この流れに乗りたい」。鹿児島県大崎町で1979年に男性の遺体が見つかった大崎事件で、殺人などの罪で懲役10年が確定し、服役した原口アヤ子さん(91)の再審弁護団は、松橋事件の再審開始を認めた10日付の最高裁決定を喜んだ。

 大崎事件も高裁が再審開始を認め、検察側が最高裁に特別抗告している。12日夕、鹿児島市内で弁護団会議があり、事務局長の鴨志田祐美弁護士によると「次は大崎だ」という声が上がったという。

 ただ「手放しでは喜べない」と、鴨志田弁護士は憤りもみせる。原口さんも高齢で、入院生活が続く。「検察側は無意味な抗告を続け、2人が死ぬまで待っているように見える。不正義極まりない」と検察の姿勢を批判。その上で、現行法では検察側の抗告が制限されていないことを問題視し「再審法を定め抗告を禁止すべきだ」と訴える。

 12日は大崎事件の発生からちょうど39年。松橋事件の宮田浩喜さんと原口さんは同じ誕生日で、縁も感じている。鴨志田弁護士は「2人に一刻も早い再審無罪判決を聞いてもらいたい」と話した。

=2018/10/13付 西日本新聞朝刊=

PR

社会 アクセスランキング

PR

注目のテーマ