消費税増税表明 負担増に見合う未来図を

西日本新聞

 安倍晋三首相が、現在8%の消費税率を、予定通り来年2019年10月に10%に引き上げると正式表明した。

 景気に配慮して過去2度先送りした経緯を踏まえるならば、今度こそ経済環境を整え、着実に実施する必要がある。消費税は膨張する社会保障費を支え、先進国最悪の水準にある財政の再建に欠かせぬ貴重な税源だ。

 来秋の引き上げに当たっては増税前後の混乱を抑え、経済への影響を最小限にすることが不可欠だ。そのための対策を適切な規模で厳選して行わなければならない。さらに今回の増税表明を長年停滞している「社会保障と税の一体改革」に本腰で取り組む契機とする必要がある。

 消費税には高い財源調達力があり、税収が経済動向や人口構成の変化に左右されにくく安定している一方、低所得者の負担は重く逆進的との批判もある。

 この時期の実施表明は、19年度予算で増税の影響緩和策を講じる必要があり、引き上げ時に飲食料品などに軽減税率を適用するため、準備の加速が必要と判断したためだろう。

 まず政府に求めたいのは混乱防止の努力だ。特に酒類と外食を除く飲食料品と新聞などの税率は、8%に据え置く軽減税率が適用される。

 低所得者の負担を軽減する効果があるが、同じ食品でも、持ち帰りと、外食に当たるフードコートなどでの店内飲食では税率が異なるなど複雑だ。消費者を困惑させない仕組みを工夫しなければならない。

 経理システム変更やレジ改修などの準備を急ぐ企業・事業者の支援も行い、円滑な実施に万全を期してほしい。

 さらに、増税に伴う景気の腰折れを防ぐことは最重要課題だ。政府は住宅や自動車の購入支援策、中小小売店支援策など景気対策を検討中だが、ばらまきは困る。14年の前回増税で景気の低迷を招いた経験を教訓に、真に必要な政策を厳選せねばならない。大規模な財政出動を求める声もあるようだが、増税をしながら、過剰な景気対策を行うのでは本末転倒だろう。

 安倍首相は今後3年間での「全世代型社会保障改革」を打ち出した。高齢者雇用機会の拡大や年金受給開始年齢の柔軟化、健康寿命の延伸などを列挙しているが、給付と負担の見直しなどで社会保障制度を持続させる方策には踏み込んでいない。

 政府は今回の増税実施表明を機に、痛みを伴う改革に腰を引かず向き合うべきだ。国民が真に求めているのは医療や介護、年金、子育てなどを巡る将来不安の解消である。家計の負担増に見合う、安心できる未来図を早急に示す必要がある。

=2018/10/16付 西日本新聞朝刊=

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