「別れは悲しいけど…」飼育員寄り添い2年半 熊本地震被災ユキヒョウ“帰郷”へ訓練

西日本新聞

斉藤礼さん(左)の訓練で、自分から網の外に尻尾を出すようになったユキヒョウのスピカ=福岡県大牟田市の市動物園 拡大

斉藤礼さん(左)の訓練で、自分から網の外に尻尾を出すようになったユキヒョウのスピカ=福岡県大牟田市の市動物園

 2016年4月の熊本地震で被災した熊本市動植物園から福岡県大牟田市の市動物園に避難していたユキヒョウのスピカ(雌、13歳)が“帰郷”に向けトレーニングに励んでいる。輸送時のストレスを軽減させるメニューが中心で、担当飼育員の斉藤礼さん(24)の指導の下、輸送箱に入る訓練などに取り組んでいる。「別れは悲しいけど元気に熊本へ送り出したい」。斉藤さんは22日の送り出す日まで、スピカに寄り添う。

 ユキヒョウは中央アジアの山岳地帯に生息するネコ科の絶滅危惧種で、九州で飼育されているのはスピカだけ。熊本地震で猛獣舎のおりが傾いて隙間ができたため、スピカは06年から暮らす熊本を離れ、16年4月23日、大牟田に移った。ジャガーなど猛獣類の飼育経験もある斉藤さんだが、当初は「震災でストレスも感じているし、飼育できるか不安だった」という。

 市動物園は、飼育動物が健康的に暮らせるようにと、採血や病気の治療がしやすい体勢を覚えさせるトレーニングを実施しており、スピカも16年夏から挑戦。尻尾からの採血を目的に、肉を褒美に与えて自主的に金網近くに座らせる訓練をほぼ毎日続けた。金網の外に出した尻尾を竹串で刺すなどして少しずつ慣れさせ、17年3月末には国内のユキヒョウで初めて無麻酔での採血に成功した。

 熊本に戻る訓練は今年3月から取り組む。輸送の際に追い立てて輸送箱に押し込んだり、麻酔を打ったりして動物の健康へのリスクを高めないためだ。訓練を通じて、今では獣舎と通路を隔てる柵が閉まる際の大きな音にも慣れてきた。輸送箱にも自主的に入り、箱が揺れてもおびえたり興奮したりしないようにトレーニングを積んでいる。熊本市動植物園の担当者も視察に訪れ、採血方法を教わっているという。

 身体能力の高いスピカが遊べるように、大きな丸太をおりに立てかけたり、乗れば揺れる台を置いたりする工夫も重ねた斉藤さん。「採血は苦労したけど、2年半にわたり世話ができて良かった。熊本に戻ったら、ぜひ会いに行きたい」と話している。

=2018/10/17付 西日本新聞夕刊=

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