僕は目で音を聴く(24) 高速道路でパンクして焦った

 25歳のとき、新潟に住んでいた友人に会いに行くため、東京都内で大型のスクーターをレンタルしました。関越自動車道でだいたい4時間の距離。新潟県内に入り、降りる予定の2カ所前のインター辺りで、車体に違和感がありました。妙に右側に寄ってしまうのです。スピードを落とせば元に戻りますが、アクセルを少し吹かすと右に行きます。危うく、右側車線の車に追突しそうになりました。

 「これはおかしい…」。パンクだと気付いてすぐ路肩に停車すると、やはり後ろのタイヤの空気が抜けていました。高速道路ではどうしたらいいのか、ちょっとパニックになりました。妻に連絡するにしても土地勘のない場所なので、どうしようもないからです。

 非常電話が設置されていることを思い出しました。路肩を歩いてようやく見つけましたが、思ったより遠く、10分ぐらいはかかったでしょうか。

 使うのも初めて。とりあえず受話器を取って、相手が出るまで待ってみました。しばらくして声が聞こえます。何を言っているのかは分かりません。「私は耳が聞こえません。バイクがパンクしたので来てほしい。場所はたぶん、○○の周辺だと思います」と声で必要なことだけ伝えました。続けて相手が何か言っていましたが「耳が聞こえないのですいません。分からないです。切りますね。待っています」。一方的に受話器を切りました。残念ながら、一方通行の会話しか成り立ちません。

 待つこと約20分。レッカー車が来たときには心底ホッとしました。発信があった非常電話の場所を目安にしたようです。

 発声ができない人はどうしたらいいのでしょう。同じような体験をした知人は、非常電話の受話器を外したまま待ったら来てくれたそうですが。今は位置情報を知らせることが可能なスマートフォンが普及していますが電波の届かない場所もあれば、スマホを持ってない人もいます。聞こえない人向けの非常電話の在り方も考えてくれたらと願います。
 (サラリーマン兼漫画家、福岡県久留米市)

 ◆プロフィール 本名瀧本大介、ペンネームが平本龍之介。1980年東京都生まれ。2008年から福岡県久留米市在住。漫画はブログ=https://note.mu/hao2002a/=でも公開中。

※平本龍之介さんによる漫画「ひらもとの人生道」第1巻(デザインエッグ社発行)が好評発売中!

=2018/10/11付 西日本新聞朝刊=

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