硫黄山噴火から半年「稲作再開いつ…」 水質悪化、代替なく 宮崎・鹿児島農家ルポ

西日本新聞

 宮崎県えびの市の霧島連山・硫黄山が250年ぶりに噴火して19日で半年。近くの長江川や川内川が酸性化し、ヒ素などの有害物質が検出されたことから、流域の宮崎、鹿児島両県では700戸超の農家が米作りを断念した。高齢化が進む南九州有数の米どころを襲った火山災害。稲作再開が見通せない中、所得減少に苦しむ農家も多い。「農業をやめる人が増えかねない」と懸念する声が高まっている。

 「稲刈りできないのはさみしいね。70年間米作りを続けてきて初めて」。長江川下流や川内川水系から農業用水を引く、えびの市の島内地区を今月中旬に訪ねると、農業植竹幸広さん(85)は牧草の種を田んぼにまきながらため息をついた。

 ブランド米「えびの産ひのひかり」で知られる同市では、風評被害からブランドを守るため、農家の15%に当たる364戸が計269ヘクタールで作付けを断念。

 「伊佐米」「湧水(ゆうすい)米」のブランド米で知られる鹿児島県の伊佐市と湧水町でも、川内川から取水するそれぞれ437ヘクタール(379戸)と92ヘクタール(戸数は集計中)で稲作をあきらめた。

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 稲作を中止した農家は今季、国と農家が掛け金を負担する農業共済制度の補償対象となったが、支払われる共済金は過去の収穫実績に基づく約35%。来季は、農業用水を取水できずに作付けできなければ共済制度に加入できず、補償適用外になる見通しだ。

 えびの、伊佐の両市は本年度、飼料作物に転作した農家に独自の助成金を交付したが、来年度は白紙。農家所得が来年以降激減する可能性がある。

 地元では、ため池などから水路を整備する代替水源確保を求める農家も多いが、水量が限られ、水利権の調整などで長期化は必至。えびの市では代替水源から取水可能な農地が来季は最大51ヘクタールにとどまるという。

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 島内地区の農業山本幸洋さん(66)は離農も考えている。「農家は農機具の借り入れ返済もしなければならず毎年毎年収入がないとやっていけない。2、3年たてば田が荒れてしまう。代替水源を早く確保してほしい。何年も待てない」

 伊佐市の農業沖田芳博さん(44)は30ヘクタールの田んぼのうち川内川から取水する15ヘクタールで稲作を中止。代わりに牛用の飼料作物のほか、0・3ヘクタールで大豆に転作した。

 大豆は湿害に弱く心配したが、天候にも恵まれ生育は良好。今月から鈴なりに実った枝豆を一株一株手作業で収穫し、転作に協力する市内の飲食店に販売する。「稲作中止が決まった5月は不安でいっぱいだった。いろいろな人の協力で乗り切れそう」と感謝する。

 ただ今年の収入減の痛手は大きい。鹿児島県側の流域の水質はほぼ環境基準内に改善しており、沖田さんは「来年は米が作れるのか。行政や農協など関係団体は早く判断してほしい」と訴える。

=2018/10/19付 西日本新聞朝刊=

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