免震装置不正 「安全」を担う資格はない

 またも、日本のものづくりで不正が発覚した。

 油圧機器メーカーのKYB(本社・東京)と、その子会社による免震・制振装置の性能検査データ改ざん問題が、全国に不安と波紋を広げている。

 改ざんの疑いがある製品を含めると使用建物は東京スカイツリーをはじめ、全国のマンションや文化施設、病院、学校、自治体庁舎など986件に上り、九州でも41件を数えるという。

 不正な装置が使われた建物は「震度7程度の地震で倒壊する恐れはない」と説明されているが、不良品と知りながら出荷したこと自体が論外だ。安全を担うメーカーとしての自覚、資格を疑う。対象施設の所有者・利用者の不安を一刻も早く解消し、不良品は全力を挙げて迅速な交換を進めなくてはならない。

 検査データが改ざんされていたのは、油圧を利用して揺れを吸収するオイルダンパーという装置だ。建物の地下部分に使われる免震用と地上部分に使われる制振用がある。

 完成品の性能検査で、揺れを抑える能力が国の認定基準や顧客企業の求める基準値から外れた場合、本来は分解して製品を再調整しなければならないが、作業に3~5時間かかるため、手間を省こうと数値を基準値内に改ざんしていたという。

 同社によると、改ざん期間は2003年から15年以上にわたり、改ざんの要領は検査員が口頭で後任者に引き継いでいたという。あきれるばかりだ。自社の製品への愛着や誇りは一体どこにいったのか、と問いたい。

 11年の東日本大震災以降、社会が建物の安全・安心に向ける視線は、格段に厳しくなっている。免震装置を巡っては、東洋ゴム工業による免震ゴムのデータ改ざんが15年に発覚している。これを反面教師に、もっと早く自浄作用は働かなかったのか。監督官庁の国土交通省も、より緻密に業界への指導を行うべきではなかったか。

 昨年以降、神戸製鋼所、三菱マテリアル、東レ、日産自動車、SUBARU(スバル)など日本の大手製造業で品質に関連する不正が相次いで発覚した。その都度、露呈するのは組織としての品質管理のずさんさだ。

 一般に生産活動で重視される要素は品質、コスト、納期とされる。昨今の企業不祥事に共通するのは、コストと納期を優先させるあまり、プレッシャーを感じた現場が品質をおろそかにしたり、せざるを得なかったりする構図だ。

 不正は企業の信頼を一瞬にして失墜させる。その代償は不正防止コストをはるかにしのぐ。納期順守や利益確保の大前提が品質保持だ。忘れては困る。

=2018/10/19付 西日本新聞朝刊=

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