諭吉の実像を読み解く 県立歴史博物館で資料展 書簡や独立心表す絵など118点

西日本新聞

1862年にロシアで撮影された福沢の写真(慶応義塾福沢研究センター所蔵) 拡大

1862年にロシアで撮影された福沢の写真(慶応義塾福沢研究センター所蔵)

上野で新政府軍と旧幕府軍の砲火がとどろく中でも悠然と塾生に経済論を講義する福沢を描いた日本画。慶応義塾の「独立心」が表現されている(慶応義塾福沢研究センター所蔵) 明治中期、教育勅語をはじめ教育が儒教主義化し復古主義が次第に台頭する社会風潮を警戒する福沢の書簡(慶応義塾福沢研究センター所蔵) 福沢の現存する最古とされる1858(安政5)年の書簡(慶応義塾福沢研究センター所蔵)

 明治の思想家であり教育者、福沢諭吉(1835~1901)の資料展としては県内最大規模となる「福澤諭吉-独立自尊へといたる道-」(西日本新聞社後援)が、宇佐市高森の県立歴史博物館で開かれている。11月11日まで。現存最古とされる直筆の書簡や本人の写真、「独立心」を描いた絵画など関連史料計118点を展示。文明開化を思想や教育の面から支えた一方、のちの軍国主義につながる世相にいち早く気づくなど時代の先を読む眼力を多彩な史料で読み解く。

 福沢は1835年、中津藩士の子として、大阪で生まれた。長崎や大阪で蘭学を、江戸で英語を学んだ。また60年の渡米を皮切りに3度、欧米を訪れるなど列強の実情を見聞。近代ヨーロッパの思想の紹介などを通じ、明治の文明開化に大きく貢献した。また慶応義塾(後の慶応大)を開くなど高等教育の発展にも尽力、代表作「文明論之概略」など多くの著作も残した。

 数多い展示品の中でも、個々が独立心を持つことの重要さを表す「独立自尊」を訴えた福沢の気構えを表現した日本画がある。68年の江戸・上野での新政府軍と旧幕府軍の戦闘中でも、福沢が平然と経済論の講義を塾生に行っている様子を描いている。世間がどのような状況でも学問のともしびは絶やさない、とする慶応義塾の「独立心」が表されている。

 また一方で、91年に知人に宛てた書簡の中で、教育の儒教化が進んでいることに懸念を伝えている。前年の90年には教育勅語が発布されるなど、急速な欧米化への反動として、社会に復古主義的な動きが見られることをいち早く指摘している。同じ書簡の中で福沢は、その影響はいずれ出てくるとも述べていることに、同館の村上博秋主幹研究員は「昭和の軍国主義や国家主義の萌芽(ほうが)をこの時期に求める研究者は多い。同時代の福沢がすでに見抜いていたことは驚く」と話す。

 11月3日午後1時半から、慶応大の小川原正道教授による記念講演会のほか、同8日午後1時半からは村上主幹研究員による関連講座(いずれも無料、事前申し込み不要)もある。入館料は一般510円、大学・高校生310円、中学生以下無料。同館=0978(37)2100。

=2018/10/22付 西日本新聞朝刊=

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