北欧を巡る<下>鉄器時代のファンタジー フィンランド

西日本新聞

 北欧最後の目的地はフィンランドの首都ヘルシンキ。エストニアの首都タリンから空路で海を超え、見えてきた陸地に山はほとんどない。「森と湖の国」と呼ばれる通り、平らな土地がどこまでも広がっていた。

 空港から中心部に向かう車窓から眺める街は、ほんの1時間前までいたタリンとは別世界。住宅などのシンプルな外観は日本で言うなら団地のようだ。個性的な壁の色、屋根のデザインもあるが、むしろ飾り気のなさが美しい。屋外の窓枠には所々に、中から読める温度計が付いている。建物は市内の発電所で沸かした湯を巡らせて室温を保つ仕組みになっており、冬でも常に温かい。室内にいても外の気温が分かるように、ということらしい。実用的だ。

 現地ガイドによると、建築デザインは1917年の独立まで100年以上ロシアに統治されていた影響が大きいという。特に色濃く残るのが中心部近くの元老院広場の周辺。統治時代の都市計画で最初にできた区画で、同じバルト海に面した港湾都市、サンクトペテルブルクに似た雰囲気なのだとか。階段を上ると、独立前に建てられたヘルシンキ大聖堂が今もそびえる。

 氷河の影響で土が少なく、地面を掘るとすぐに岩盤に行き当たるというこの土地で、岩をくりぬいて建てられたのがテンペリアウキオ教会。当初は地上に建てる計画だったが、旧ソ連との戦争を挟んで設計が変更されたという。岩を生かした壁面の静けさ、落ち着きを感じる1階と、巨大なUFOが空から迫るような銅板の屋根が存在感を放つ2階。自然の岩と人工の構造物の融合が、ちょっと不思議な空間を生み出している。

 観光名所のセウラサーリ島に向かう道すがら、幸運な出会いに恵まれた。バイキング時代の衣装を着た男性の姿に目を奪われ、声を掛けてみた。彼の名はミッコ・ヘイモラさん(39)。ヘルシンキ市民を中心とした2団体が毎年9月の最初の週末、歴史を伝えるイベントをボランティアで開いているという。

 すぐそばの島では鉄器時代の市場が再現され、中世の人々になりきった老若男女でにぎわっていた。年に1度だけのファンタジー映画のような世界に遭遇して興奮してしまった私の質問に、にこやかに答えてくれたヘイモラさん。フィンランドの国民自身も、スウェーデンに支配された中世以前のことはあまり知らないそうで「ちゃんとした鉄器時代があったことを知らせたい。自分の人生を使った趣味です」と話してくれた。静かな語り口ながら、フィンランド名物のサウナにも負けない熱い情熱を感じた。

 ●メモ

 福岡空港からヘルシンキまで、フィンエアーの直行便で約10時間。フィンランドはサウナ発祥の国で、ほとんどのホテルはもちろん、会社や病院、老人ホームや国会議事堂にもある。国の人口約550万人に対し、サウナが200万カ所を超えるとされる。

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 ●寄り道=「かもめ食堂」は大人気

 ヘルシンキを舞台にした邦画「かもめ食堂」のロケ地となったカフェをリニューアルした「ラヴィントラかもめ」は、日本人をはじめとした観光客や住民にも人気のレストランだ。お薦めの「おいしいフィンランドボックス」=写真=は35ユーロ(約4600円)。トナカイの肉やサケ類の淡水魚「ムイック」などを使ったフィンランドの伝統料理が、松花堂弁当のように1度で味わえる。

=2018/10/22付 西日本新聞朝刊=

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