【数字で切る熊本市 11・18市長選】(3)地震後の市民病院赤字130億円 新築しても経営厳しく

西日本新聞

 「熊本市民病院に多くの心疾患の子どもが救われた。命のとりでを残してほしい」

 17日、心臓病の子どもと母親たちが大西一史市長に6万6867人分の署名を提出し、心臓病専門医を継続して配置するよう求めた。

 1946年に開院した市民病院は、93年に小児心臓外科を設置。2004年に県総合周産期母子医療センターに指定され、乳幼児の心臓手術など高度な医療を担ってきた。

 しかし、16年4月の熊本地震で北館と南館の二つの病棟が損壊し、19年秋に約2キロ離れた場所へ移転新築することになった。市は移転に伴い、小児循環器内科を小児科に統合するなど診療科を34から28に整理・縮小する方針を掲げる。

 署名を受け取った大西市長は、小児循環器内科の存続に前向きな姿勢を見せたが、病院幹部は「医師の人事は他病院との兼ね合いもある」と専門医を確保する難しさを口にする。

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 市が診療科の縮小を進める最大の理由は、近年の患者数の減少だ。09年度の外来24万5167人をピークに、15年度は16万4907人に落ち込んだ。

 1979年建築の南館が耐震基準を満たさないなど老朽化も進む。市は2015年度に建て替える計画だったが、資材費などの高騰を受けて延期した。地震が追い打ちとなり、病院存続に黄信号がともった。

 事態が急転したのは、地震1カ月後。大西市長は「市民病院の高度な医療の存続は、熊本市だけの問題ではない」として、国の財政支援を取り付け、移転新築すると発表。事業費約223億円のうち、国の補助金や地方交付税で約97%を賄い、病院の負担を約7億円に抑えた。

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 移転新築後も、人材確保と経営健全化という課題が残る。

 市民病院は地震で被災した2病棟を閉鎖。新館(管理棟)で態勢を大幅縮小して診療を再開したが、患者が激減し、赤字が膨らんだ。16年度の医業収益は前年度比85%減の約17億円に激減。今年3月には、地震後から移転までの3年半で「約130億円の赤字となる」との試算を公表した。

 市民病院は人件費抑制策として、業務がなくなった看護師や技師を外部に派遣した。122人が市役所で復興業務を担当し、153人が他の病院で働く。95人いた医師のうち61人が退職した。地震前689人いた職員は、8月には287人になった。ある職員は「残業が厳しく制限される時代だけに、24時間診療には十分な職員数が必要。派遣先の病院から医師や職員が戻るのか不安だ」と吐露する。

 開業まで約1年。新病院は130億円の赤字を30年かけてゼロにする計画。必要な職員数はまだ公表されていない。

=2018/10/24付 西日本新聞朝刊=

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