僕は目で音を聴く(25) もっと聴者の話の輪に入りたい

 聴者ばかりの話の輪に入るとします。聞こえない私からすれば、いろんな方向で会話が飛び交っていて、どこから会話に入っていけばいいのかが難しく、戸惑うことが多いです。

 こちらから「何と言ったの?」と聞くこともあれば、隣の人が親切だと「今、こういう話をしているんだよ」と教えてくれることもあります。

 おかげでだいたいは理解できるのですが、あくまで会話のおおまかな流れや、その話の主題しかつかめません。今まで話していたことを一から百まで説明するのは難しいし、大変ですから仕方がないことではあるのですが…。

 どうしても話を理解し、加わることが遅れるので、関連する話を思いついて、いざ言おうとしたらもう別の話題になっている、という感じです。同じテーマの話題が続いていれば乗りやすいのですが、実際はなかなか言えないまま、会話が先に進んでいくことになります。こうした情報伝達の遅延が、聞こえない人にとってはもどかしいことなのです。

 話題が変わるテンポが速いときは本当に苦労します。タイミングを逃して発言してしまえば、ほかの人の会話に割り込んだ形になりますし、頑張って「やっと言えた!」と思っても「いまさらその話?」みたいな空気になる場合もあります。一度そうなってしまうと、もっと言い出せなくなり、黙り込むしかなくなります。

 じゃあ、どうしたらいいの?-と尋ねられれば、何とも答えられないのが現実でしょう。やっぱり一つだけ言えるとすれば、その場に聞こえない人がいたら、ちょっとだけ話のスピードを緩めるなど、気遣いや配慮をしてもらえれば本当にありがたいなあ、ということです。きっと聞こえない人が、いろいろなことを話し始めるのではないかと思います。

 私は、もっと聞こえる人の輪の中に入って、もっと話がしたいのです。それが簡単ではないと分かってはいても。
 (サラリーマン兼漫画家、福岡県久留米市)

 ◆プロフィール 本名瀧本大介、ペンネームが平本龍之介。1980年東京都生まれ。2008年から福岡県久留米市在住。漫画はブログ=https://note.mu/hao2002a/=でも公開中。

※平本龍之介さんによる漫画「ひらもとの人生道」第1巻(デザインエッグ社発行)が好評発売中!

=2018/10/18付 西日本新聞朝刊=

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