大分・国東半島 秘境に秋の訪れ

西日本新聞

 九州の北東部、海に丸く突き出た形の大分県・国東半島。豊かな自然に恵まれたこの地には、独特の山岳宗教文化が受け継がれてきた。一帯の寺院群を総称する「六郷満山」は今年、開山1300年。記念の催しもさまざまに開かれているという。福岡から日帰りの旅で大分県国東市、杵築市、日出町を巡り、秋の空気をたっぷり吸い込んだ。

 JR博多駅からバスで揺られること約2時間半。山あいの道を進み、天台宗峨眉山文殊仙寺に向かった。うっそうとした緑に包まれると、一段と空気が冷たく感じる。案内してくれた国東市観光課主幹の中野浄昭さんは「都会にはない景色。秘境に来たという感じがするでしょう」と秋めく木々に目を向けた。

 文殊仙寺は648年の開基とされる六郷満山でも随一の古刹(こさつ)。寺に至る約300段のこけむした石段を一気に登ると、背中にびっしょりと汗をかいた。本尊は文殊菩薩(ぼさつ)。「三人寄れば文殊の知恵」のことわざにちなみ、合格祈願に訪れる人も多いという。

 お参りを済ませた後、精進料理をいただいた。「質素で地味」というイメージだったが、国東半島産の野菜をふんだんに使った煮物や白あえなど10品以上が並んだお膳は彩り鮮やか。肉や魚は使わずヘルシーで、中でも寺の近くで採れたというシイタケの天ぷらはとっても美味だった。

 腹ごしらえが済んだら、いよいよ密教独特の祈祷(きとう)「護摩焚き」が始まる。願い事が書かれた木の札を、僧侶が読経しながら釜の炎にくべていく。激しい太鼓の音が響く本殿で、炎は天井に届くほど大きくなる。熱気にさらされた頬が火照る。しばし時間を忘れて見入ってしまった。

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 半島東側の海沿いの道を走り杵築市へ。今年7月に「ちえびじん 純米酒」がフランスの日本酒コンクールで最高賞に選ばれたという同市の中野酒造を訪ねた。蔵をのぞくと、流れているのはクラシック音楽。中野淳之社長は「目に見えないものを大事にしたくて、麹(こうじ)菌に聞かせています」。「優しい甘みときれいな酸味」が特長というちえびじんは、洋風料理やチーズにも合いそうな味わいだった。

 「九州の小京都」とも呼ばれる杵築市は、杵築城天守閣を中心とした城下町の風情が色濃く残る。「着物が映える町並みで、訪れた人はあちこちで写真を撮っていますよ」と教えてくれたのは杵築市観光協会事務局長の三浦孝典さん。「レンタルきもの和楽庵」には、男女合わせて400着以上がそろう。着物で散策すると杵築城などの観光施設が入場無料になるサービスも。年間1万人以上が利用しているという。

 旅の締めくくりは日出町から出発する漁船ミニクルーズ。なんと地元の漁師さんが普段使っている漁船に乗せてもらえる。夕方は逆光でまぶしくなってしまうが、早い時間なら別府の温泉街であちこち立ち上る湯煙も見えるという。夕日に照らされる別府湾も美しく、頬に当たる潮風が心地よい。九州の懐深さを知り、歴史と自然を堪能した一日だった。

 ●メモ

 福岡から大分県の国東半島に向かうには車が便利。九州自動車道の福岡インターチェンジ(IC)から東九州自動車道を経由して、宇佐ICまで約1時間40分。そこから国東市街まで1時間程度。文殊仙寺の精進料理は予約制で、1人2500円(税込み)。4人以上から受け付けている。別府湾の漁船ミニクルーズは高校生以上3000円。

=2018/10/24付 西日本新聞夕刊=

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