外国人労働拡大 「見切り発車」でいいのか

 深刻な人手不足の解消をうたって、日本の入国管理行政を大転換する。けれども詳細な制度設計は後回し‐。これでは到底、国民を納得させられまい。

 新制度が日本社会に及ぼす影響はもちろん、少子高齢化にあえぐ日本が今後、諸外国とどう向き合い、いかに「共生」していくか。幅広い視点から議論を重ねることが先決である。

 政府が今国会での成立、来春実施を目指す入管難民法改正案のことだ。従来、専門職や技能実習などに限定していた在留資格に「特定技能」という枠を新設する。それによって単純労働分野でも外国人を広く受け入れていく仕組みになっている。

 これに対し、自民党の法務部会など与党内でも疑問や反対意見が続出し、法案の了承手続きは難航した。自民党内ではもともと「移民」受け入れへの慎重論が強い上、法案の中身に不明確な点が多いからだ。

 「特定技能」は「相当程度の知識・経験」(1号)と「熟練した技能」(2号)の2枠に分かれる。滞在期間は原則5年間で、2号は家族の帯同を認め、一定要件を満たせば在留の長期延長が可能とされる。受け入れ先は農業、建設業など10業種以上の分野が想定されている。

 しかし、二つの枠の線引き、具体的な仕事内容、審査方法などは示されていない。受け入れ分野や規模なども含め、詳細は省令などで定めるとしている。

 そもそも各分野でどれほど人手が不足しているか、外国人にどんな役割を担ってもらうか、肝心なことが不透明である。与野党双方から「見切り発車」との批判が出るのは当然だろう。

 安倍晋三首相は「いわゆる移民政策は取らない」と強調するが、日本では既に128万人の外国人労働者(昨年10月末現在)が暮らしている。その中には技能実習生や留学生が多く含まれ、彼らが低賃金労働者と化している実態もある。そこに屋上屋を架し、矛盾やトラブルを広げることになりはしないか。

 受け入れに当たっては、外国人を単なる労働力とみなすのではなく、共に暮らす仲間として尊重することが肝要だろう。

 賃金待遇をはじめ日本人と同等の人権保障、社会保障が受けられる仕組みを整えることだ。それがなければ日本はむしろ外国人から敬遠されかねない。

 本来、そうした視点も含め、さまざまな施策がセットで示されるべきテーマである。

 日本の人口減、労働力不足は一過性の現象ではない。外国人との「共生」は中長期にわたる命題であり、未来の国家像とも深く関わる。今国会での法改正にこだわらず、広く論点を洗い出して議論を尽くすべきだ。

=2018/11/02付 西日本新聞朝刊=

PR

開催中

学ぶ!SDGs×企業

  • 2021年10月20日(水)
  • カフェ&コミュニティースペース dot.(ドット)交流スペース
開催中

ストレッチング講座

  • 2021年9月13日(月)、15日(水)、22日(水)、27日(月)、29日(水)、10月6日(水)、11日(月)、13日(水)、20日(水)
  • 野中生涯学習センター

PR