楽しみながら「故郷を守る」千綿由美さん

西日本新聞

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「むらつむぎ」代表千綿由美さん

◆ 新しい“発見”

 樹齢3千年の「川古の大楠」で知られる佐賀県武雄市若木町は、市中心部から少し離れた中山間地域。そこで既存建物の活用や移住支援、空き家再生などに取り組んでいる。土を使った雑貨の店とカフェも開き、ワークショップなどを通し若木の魅力を伝えている。人と事と物をつむいで、「豊かな故郷」を引き継ぐために試行錯誤する日々だ。

 昨年9月、築100年の古民家をリノベーションした集会所「森羅万象館」をオープンさせた。地域の方々が集まれる場という位置づけだが、貸しスペースとしてイベント開催などにも活用してもらっている。居間があって、納戸があって、土間があって、その先に竈(くど)がある昔ながらの田舎の民家で、先人の暮らしぶりがしのばれる。そんな空間が身近にある若木の町に、若い人や移住してきた人たちも関心を持ってくれるのではないだろうか。

 森羅万象館で9月、古文書を読む会が開かれた。江戸時代の庄屋の「諸控え帳」には要衝地として栄えた町の様子が記され、長崎警備に向かう人々も通ったであろうと考えると興味深かった。今、旧長崎街道の注目度は高くはないが、歴史を知れば新たな魅力が生まれる。地域づくりのヒントを見つけた気がした。

 そういえばこんなことがあった。10月に若木町で棚田をテーマにした音楽フェスティバルが初めて開かれ、地元のお年寄りたちとお手伝いしたのだが、準備の過程で100年以上前に作られたと思われる大きな幕が見つかった。幅は5間(約9メートル)ほどあり、美しく染め抜かれ、波がデザインされていた。かつて地域の祭りで、特別にしつらえた舞台に張ったものだろう。にぎやかで、楽しそうな当時の人たちの姿が浮かんだ。脈々と受け継がれてきた地域の歴史も、改めて“発見”したようだ。幕は音楽フェスタの会場に張られ、老若男女、たくさんの人の目を楽しませた。

 地域が元気になるためには、住んでいる人たちがその土地を愛し、生活を楽しみながら、「故郷を守る」という意識を持つことだと考える。移住を考えている人も、そんなところに注目しているだろう。道は長いが、一歩一歩進んでいきたい。 (談)

    ◇      ◇

 千綿 由美(ちわた・ゆみ)「むらつむぎ」代表 佐賀県武雄市出身。2003年にNPO法人を設立し、地域おこしに取り組む。現在は任意団体「むらつむぎ」で移住者たちと町の案内マップづくりやイベント企画なども行う。

=2018/11/04付 西日本新聞朝刊=

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