熊本市長選、現新の争い 震災復興在り方問う

 熊本市長選が4日、告示され、ともに無所属で、再選を目指す現職の大西一史氏(50)=自民、公明推薦=と、新人で元市議の重松孝文氏(71)=共産推薦=の2人が立候補を届け出た。市内では最大震度6強を記録した2016年4月の熊本地震後、初めての市長選。現職と新人の一騎打ちとなるのは政令市前の02年の選挙以来で、18日に投票、即日開票される。

 熊本市では9月末現在、1万2千人を超す被災者が仮設住宅などで仮住まいを続けている。選挙戦では、大西市政の被災者支援策や復興策への評価に加え、耐震基準を満たさないとされる市役所本庁舎の建て替えの是非や、官民で進める熊本城そばの桜町再開発事業などが論点となりそうだ。

 出陣式で、大西氏は中心市街地の再開発事業の意義を強調。「復興をさらに加速させると同時に、将来の礎を着実に築いていくことが必要だ」と述べた。

 重松氏は「被災者が一人も残らず自分で生活できるよう支援する必要がある」と主張。大型開発を重視する現市政を批判し、福祉重視への転換を訴えた。

 国民民主と立憲民主は自主投票。連合熊本は大西氏を推薦している。

 有権者数は60万5276人(3日現在、市選管調べ)。同市長選としては18歳以上が投票できるようになって最初の選挙で、前回14年から1万5891人増えた。

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被災者、期待と諦め 「支援充実を」「誰でも同じ」

 4日告示の熊本市長選に立候補した現職の大西一史氏(50)と新人の重松孝文氏(71)は、そろって熊本地震からの復興を公約の柱に据える。しかし、地震から2年半が過ぎても、仮住まいの被災者は1万2349人(9月末現在)を数える。「生活再建への支援を充実してほしい」「誰がなっても同じでは」。被災者の間で、論戦への期待と諦めが交錯した。

 熊本市東区の仮設団地で暮らす無職男性(66)は4日、車いすの母親(94)を連れ候補者の街頭演説に出掛けた。自宅は大規模半壊し、災害公営住宅への転居を待つ。母親は地震後、おむつが必要になり、デイサービスに週3回通う。収入は2人の年金だけだ。「介護があるので仕事ができない。市は(昨年終わった)被災者の医療費免除を復活してほしい」と求める。

 「市長選の日程も候補者名も知らない。誰がなっても変わらん」。同じ仮設団地で生活する主婦(21)は投票に行かないつもりだ。1年前、長男(1)を保育園に入園させたいと思ったが、市の窓口で「(近くに)空きがない」と断られた。車を持たず、仮設から遠い園は送迎が難しく、申請を諦めた。9月には長女が生まれた。「働きたくなって子どもを預けたいときに、保育園が見つかるのか」

 東区のアルバイト男性(60)は今年5月、市が借り上げた「みなし仮設」の入居期限が終わり、同じ学生向けアパートを自分で再契約した。家賃月2万円。4畳半ほどの部屋は机やベッドを置くと、ほとんど身動きが取れない。

 地震まで暮らしていた西区のマンションは倒壊した。老後のため貯金を取り崩さないように暮らす。「投票は大切と思うが、雨が降ったら行かないかもしれない」と力なく語る。

 熊本市の自営業の女性(75)は築28年の自宅が一部損壊と判定され、180万円かけて修理したが、復旧ではなくリフォームとの認定を受け、10万円の災害義援金はもらえなかった。市で交付された住宅の罹災(りさい)証明13万6258件のうち、一部損壊は8万2587件。「一部損壊でも修理が必要。支援をもっと充実してほしい」と訴えた。

=2018/11/05付 西日本新聞朝刊=

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