虐待、発達障害、LGBT……子供たちの未来に関心をもつための現場リポート

西日本新聞

『漂流児童』石井光太著 拡大

『漂流児童』石井光太著

 先般、こともあろうに国会議員がLGBTに対する差別的な内容の文章を発表し、掲載誌が廃刊となる騒動があった。この件は、政治的立場がどうこういう以前の人権問題だと思うが、その議員の属する与党は即座に処分して見識を示す、ということをしなかった。むしろ、たいしたことじゃない、という感じで擁護する幹部も見られた。彼らが国民の代表として、法律を作る立場の人間かと思うと、暗澹たる気持ちになる。

 しかし、真の問題は、この騒動を見聞きした有権者の何割がLGBTというものをちゃんと理解しているか、ということなのである。本書は、セクシュアル・マイノリティーと呼ばれる人たちのみを取り上げたものではなく、児童福祉の現場に取材したノンフィクションだ。けれども、LGBTもまた児童福祉にかかわる問題なのだと知ってもらいたくて、あえてこの部分にふれた。

 LGBTの当事者たちが最も悩むのが、思春期である。たとえば、「中学に進学してスカートをはくのが嫌だった」という理由で、家出し、数日間行方不明となっていた6年生の「女の子」の例が紹介されている。彼女は制服のない学校への進学を希望したが、人口数万人の小さな町では、かなわなかった。

 彼女のように悩みをかかえ、行き場をなくした子供たちは大勢いる。本書の特徴は、そうした児童を支援する側にスポットをあて、具体的な活動を紹介しているところだ。丁寧に取材されているため、興味深いだけでなく、実際に支援活動を始めたい人たちにとっての指南書としても読める。

 LGBTの章でいうと、当事者団体である「レインボープライド愛媛」の立ち上げの経緯から活動の現状までが報告されている。市の人権啓発課に赴いて助言を受け、そこから活動が広がるようすなど、なるほど、そういう手順を踏めばいいのかということがわかる。

 他にも、女子少年院、児童養護施設、赤ちゃんポスト、フリースクールといった、知っているようで知らない児童福祉の現場が克明に記されている。こうした問題に関心のある人、あるいは、まったく知識のない人にこそ目を通して欲しい内容だ。


出版社:潮出版社
書名:漂流児童
著者名:石井光太
定価(税込):1,836円
税別価格:1,700円
リンク先:http://www.usio.co.jp/html/books/shosai.php?book_cd=4261

 西日本新聞 読書案内編集部

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