福岡市長選リポート<南区>バス頼みの公共交通 高齢化受けた足の確保を

西日本新聞

長丘地区と西鉄高宮駅を結ぶ長丘-高宮循環バス。小型バスを使っている

 最寄りの鉄道駅まで3キロ。福岡市南区野多目6丁目の高台に住む矢野幸子さん(74)にとって生活の足はバスだ。家に張った時刻表を確認し、歩いて約5分の老司団地バス停に向かう。

 マッサージ治療や買い物で南区大橋に行くときは4番か48-1番、天神に行くときは福岡都市高速経由の610番か161番の西鉄バスに乗る。バッグには、出掛けた先でよく使うバス停の時刻表も入れている。

 市内7区の中で唯一地下鉄の駅がない南区。国土交通省九州地方整備局が設立した「九州モーダルコネクト研究会」の調査によると、JRや西鉄、地下鉄といった鉄道駅1キロ圏内に住む人の割合を示したカバー率は市全体が68・9%なのに対し、南区は46・3%と7区で最も低い。中でも南部は「空白地」。公共交通として、バスは欠かせない。

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 西鉄は那珂川、柏原、桧原の各営業所などから西鉄大橋駅や清水町を経由して市中心部に向かうバス路線を網の目のように走らせている。

 だが、矢野さんの使う老司団地バス停のある県道は、国道385号沿いに比べると本数が少なく「もう少し便利になるといいね」。平日の昼間、西鉄大橋駅を通るバスは1時間に2、3本。610番のバスも平日は午前10時45分発が最終だ。もう一つ困るのが渋滞。「老司四ツ角」の交差点が混雑し、時間通りに到着しないことも多い。

 矢野さんの暮らす老司校区の高齢化率は28・5%(2017年)で、市平均を7ポイント上回る。矢野さんは「これからバスを頼りにする人はますます増えるんじゃないですか」と考える。

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 丘陵地やバスが通れない狭い道路も多い南区で、高齢化に対応する生活の足をいかに確保するか。

 参考になる取り組みが同じ南区にある。長丘地区と西鉄高宮駅を結ぶ西鉄の循環バスだ。住民の要望が通り、14年から本格運行している。平日が1日34便、土日祝日が17便。坂や狭い道が多い住宅街を通れるように、約30人乗りの小型バスを使う。何度も道を折れ曲がりながら、乗り継ぎのバス停やスーパーの前に停車する。

 西鉄によると、17年度は平日の1日平均利用者が約680人。長丘自治協議会の田中文夫会長は「循環バスができて便利になった。朝夕は通勤通学、昼間は高齢者が買い物や病院のために乗っていて利用者は増えている」と喜ぶ。南区では柏原3丁目でも住民の要望を受けて、新路線が実現した例がある。

 南区では高齢化の進展を見据え、矢野さんのように、住民のバスへの潜在的な要望が今後、ますます高まるだろう。だが、民間バス路線は乗客が少なく採算に合わないと減便や廃止の可能性がある。地域と交通事業者の間に立つ行政がどんな役割を果たしていくのか、新たな知恵が求められている。

=2018/11/10付 西日本新聞朝刊=

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