消費増税対策 本来の目的忘れては困る

 これでは、なりふり構わぬ対策のてんこ盛りではないか。
 来年10月に消費税率を8%から10%に引き上げるのに合わせ、景気の腰折れを防ごうと政府が検討中の経済対策である。

 クレジットカードなど現金を使わない買い物に増税分をポイント還元する案や、政府が一定額を上乗せするプレミアム商品券の発行をはじめ、住宅ローン減税の拡大、自動車関連の減税-と、大盤振る舞いの様相だ。

 増税時、景気への目配りは大切だ。しかし冷静になってほしい。ここまで大規模な対策が必要なのか。増税の本来の目的を見失っていないか。景気の下振れを防ぐのに必要なのは、安倍晋三首相の言う「あらゆる施策の総動員」ではなく、「効果ある施策の厳選」ではないか。

 2014年に税率を5%から8%に3%引き上げた際の家計負担増は8兆円で、5兆5千億円の経済対策を講じたが、景気が後退した苦い経験がある。ただ、来秋の上げ幅は2%で、飲食料品への軽減税率導入や教育無償化などにより、負担増は2兆2千億円と試算され、経済への影響は限定的ともいわれる。

 それなのに目下、政府が検討中の景気対策は、前回の経験に懲りてか、来年の統一地方選や参院選を見据えてか、前のめりで何でもありのありさまだ。

 まず、目玉とされるポイント還元に問題が多い。買い物時に現金でなくクレジットカードや電子マネーなどで支払えば、次回以降に使えるポイントを付与する内容だ。中小小売店などが対象で、軽減税率適用で8%のまま据え置く飲食料品も対象という。消費税2%相当のポイント還元が検討されており、飲食料品の税率が今より低い実質6%になる奇妙な事態も生じる。

 さらに、対象となる中小事業者の線引きも難しいし、カードを持たない高齢者も多い。決済システムで対応を迫られるカード会社も困惑気味だ。キャッシュレス決済普及は大切だが、消費増税とは別個の政策課題だ。

 プレミアム商品券も問題だ。利用できる対象者の拡大を検討中だ。前回増税時も発行されたが、効果に疑問符が付いた。

 そもそも消費税の増税は、高齢化で膨らむ社会保障費の財源を増やし、借金頼みの財政を改善するのが目的だ。しかし昨年、首相が増税分の使途変更を打ち出し、財政再建に回す額を大幅に減らした。そこに過大な経済対策を追加すれば一体、何のための増税か分からなくなる。

 今、必要なのは増税と年金、医療、介護など社会保障の未来図を結び付けた議論を急ぐことだ。同時に、国民に負担増を求めるなら、政府側の「身を切る改革」も素通りでは困る。

=2018/11/10付 西日本新聞朝刊=

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