模索する専門性(2)水産高 「付加価値」求めて

魚の缶詰、企業とコラボ

 九州地区の八つの水産・海洋高校が研究成果を競う発表大会が2日、宮崎市で開かれた。「シークワーサー入りのえさで臭みを消したフルーツ魚」「特産のヒオウギ貝とオリーブオイルを使ったアヒージョ」…。

 ユニークなテーマが並ぶ中、2年連続で最優秀賞に輝いたのは宮崎市の県立宮崎海洋高。報告したのは、宮崎県が近海一本釣り漁の漁獲量日本一を誇るカツオと、宮崎特産の黒にんにくを使った「カツオのドライカレー」の缶詰だった。

 「水揚げは多いが市場で安価な取引をされ、漁業者の収入に結びつかない魚種も多い。保存性のよい缶詰にして付加価値をつけ、企業や家庭で災害への備えをしてもらおうと考えた」

 大会で研究グループはそう強調。付加価値、保存性といったキーワードに加えて、災害時の活用という狙いが高く評価された。

 同校は水産食品コース3年生の課題研究として、2年前から地魚を使った缶詰作りに取り組む。県内企業や団体と連携して商品を開発、災害時には県内企業が購入した缶詰を募り、被災地に提供する「備蓄缶プロジェクト宮崎」を進める。

 本年度は男女9人が挑戦。食材の選択、組み合わせ、調理方法に量産、販路、採算性。自転車で5分の場所にある缶詰会社に通いながら議論と試作を重ねた。「万人受けする香辛料の配合が難しい」「魚の量が多いほど原価が膨らみ価格が高くなる」。水産業者らを対象にした試食会も繰り返し、商品化にこぎつけた。

 3年生の阪元裕香さん(18)は「原価計算を徹底して材料を決めないと企画倒れに終わることを学んだ。ビジネスの裏側を知ることができた」と振り返る。

 これまでに秋口の小ぶりで安価なシイラの身を油漬けにした「宮崎マヒマヒフレーク」や、特産の切り干し大根と養殖ブリを使った「宮崎海洋 切干ぶり大根」を開発。7月には西日本豪雨で被災した愛媛県宇和島市に、46社から提供された約2500缶を支援物資として届けた。

 実社会を見据えた生徒たちの深い学びと、知識や技術を生かした「顔の見える」学校作り。こうした取り組みは今、全国の水産系高校で進められている。

時代に合った水産のプロに

 「運ぶ」「獲(と)る・育てる」「作る」。宮崎海洋高が数年ぶりに一新した今年の学校パンフレットは、貨物船、養殖、食品製造など幅広い進路を、イラストを多用して分かりやすく示す。

 「海洋科学科」の単科校である同校の生徒は1年時に全員が水産海洋の基礎を学び、実習船での体験航海も経験。2年の進級前に漁業系、機関系、食品系のコースを選択する。

 同校は専門高校に押し寄せる志願者減少の大波を、若者に人気の海洋レジャーや潜水などを選択科目に加える学科改編などで食い止めていたが、3年前から定員割れが続く。2015年秋に起きた実習船内での暴行事件の影響もあり、昨年度の入学者は約40人不足した。

 「定員割れになると、入学のハードルが下がり、目的意識がはっきりしない生徒が増えてしまう。その学年のみならず他の学年も充実感を味わう機会が減り、学習へのモチベーションを保つのが難しくなる」と三浦正貴教頭は言う。

 卒業生の9割は就職。近年、漁業者は10人以下にとどまるのに対し、国内の貨物輸送専用の「内航船」の船員を目指す生徒が増えている。内航船の船員の半数は50歳以上と高齢化が進み人手不足が深刻化。待遇の改善に加えて、人材を育てる水産系高校への期待も大きく、初任給が30万円を超えるケースもあるという。

 鍋倉一幸校長は「水産高校は漁師養成校というイメージが根強い。しかし、やる気次第で卒業後に活躍できるフィールドは国内外に広がる。企業などとの連携を通じて魅力を伝えたい」と訴える。

 今月上旬、同校では間近に迫った文化祭を前に放課後の校舎の一角で、機関系コースの3年生が工作機械を巧みに操って販売用のバーベキューこんろの製作に汗を流していた。

 同校は来年度の新入生から「総合的な探究の時間」で知的財産権について学び、開発した商品の商標権取得なども目指す予定だ。時代のニーズに合った「水産のプロ」養成へ、学校側の柔軟性も問われていると感じた。
 

水産・海洋系高校の現状 文部科学省によると、全国に41校(2017年度)。少子化や魚価低迷などで統廃合が進み、ピーク時(1965年度)の65校から減少、生徒数も約2万1000人から約9千人に半減した。1学年の生徒数は約3千人で高校生に占める割合は0・3%。実習船や専門教員が必要で、普通高校に比べて数倍の経費がかかるとされる。福岡、長崎、山口3県の水産系高校は共同の大型実習船「海友丸」を2010年から運用。実習船が老朽化している大分、香川両県の高校も「翔洋丸」を新造し19年度から共同運航する。
 

=2018/11/11付 西日本新聞朝刊(教育面)=

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